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戦前の新聞で、ネタを求めてナンパ待ちするモンスター企画“貞操のS・O・S”  新卒の1日目の女性記者が囮に…

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genre : ニュース, 昭和史, 社会

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当時のラブホテルに連れ込まれ…

第1回、つけ髷(まげ)に地味な和服姿で上野公園に現れた好子は、西郷隆盛の銅像の下で獲物を待ち受ける。関西から家出して青山の親戚を頼って上京してきたおぼこい娘の設定である。

すると早速四十絡みの男が現れ、青山行きの電車の駅まで送るといいながら、なぜか公園内の森の方に連れて行く。そして今夜は遅いから一晩泊まって翌朝から青山に行けばいい、ひとりで宿に泊まると怪しまれて通報されるから自分と泊まろう、などといいながら帯に手をかけて寄り添ってくる。挙句に「それともいッそ、私のこのトンビ(*4)にくるまって、こういう工合にして、(と彼れ氏は私を、トンビの袖で包んで……)公園の中で、一夜を過ごそうじゃありませんか」などととんでもないことを言う。

好子は慌てて宿に泊まると嘘をつき、駅に向かったところ客引きが現れ、ふたりは案内されるままに上野の連れ込み宿(*5)に入った。明るいところで見た男の額には斜めに走った刀傷があり気味が悪い。男が女中に床を言いつけたためこのままでは逃げられないと感じた好子は風呂に入りたいと訴え、その隙に宿から出ようとする。

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が、扉には鍵がかかっていた。帳場の主人に開けるよう言うと「さァねえ。お連れさんにおたずねしてみなければ」などと言を左右にする。たまりかねた好子、「女だとも(ママ)って馬鹿にしなさんな! これでも私はね……」と名刺を出して企画を説明したところ「あ、そ、いや、これはどうも、へい。……ではどうぞ、商売の迷惑にならぬように、へい、一つお手軟(てやわら)かに……」ということで辛くも難を逃れた。

なお、記事には宿屋の玄関の写真が添えられているが、これがこの曖昧宿の「商売の迷惑」になったかどうかは定かではない。

(*4)トンビ ケープ付きの男性用の外套。
(*5)連れ込み宿 情事を目的とした簡易宿。

ダンスホールで口説かれるのを待っていると…

好子は「『S・O・S』に応じて私を救ってくれたものは、私自身の名刺にほかならない。これが一般普通の場合だったらどうなるか、考えてもぞツとする」と締めくくっているが、この任務自体にぞっとする筆者である。