文春オンライン

次の箱根駅伝で「関東学生連合」は走れない…なぜそんな重大事が学生不在の"密室"で取り決められたのか

source : 提携メディア

genre : エンタメ, スポーツ, 教育

note

これは箱根駅伝が誰のための大会なのか、よくわかるエピソードのように感じる。連合チームの存続を望む大学があるなかで、正式な手続きを行わずに“密室”で決定してしまう関東学連の体質は変わらないようだ。

これまでも「関東インカレポイント」(関東インカレの成績を予選会のタイムに換算する)を導入するなど、多数決では絶対に通らないであろうルールが承認されてきた。

正月に開催される箱根駅伝は絶大な人気を誇っている。主催する関東学連は1919年(大正8年)に創立。日本陸上界では最古の連盟組織だ。国民的な大イベントになった箱根駅伝は“学生主体”で大会を運営されてきたはずだったが、いつしか“特定の権力者”が強行で新ルールを決めるような組織になっているようだ。

ADVERTISEMENT

第101回大会での連合チームの編成可否は現時点で未定だが、関東学連の加盟校数は244校(2023年度)。一方で箱根駅伝の通常出場枠は「20校」だ。箱根駅伝に出られない大学の方が圧倒的に多い。純粋な多数決になれば、連合チームが存続される可能性は高い。廃止にするなら、合理性のある理由が必要になるだろう。誰もが納得するかたちでルールを決めていくしかない。

また第100回大会は全国の大学に門戸が開かれたが、この発表も予選会が開催される1年ほど前だった。遅くとも4~5年前にアナウンスしなければ、自力で夢をかなえることはできない。

予選会だからといって、フリーパスで出られるわけではないからだ。予選会のエントリーは各校10人以上14人以下で、「エントリー者全員が10000m34分以内のトラックでの公認記録を有していること」という条件がある。

単に人数をそろえればOKではない。ある程度の走力を求められるため、長距離部員が少ない大学は予選会に出場するのもなかなか難しい。フィクションの世界のように、わずか1年でチームを整えて、予選会を突破するのは不可能だ。

箱根駅伝の人気が高くなったゆえに、大人たちの暴走が目立っている。箱根駅伝は誰のための大会なのか。第100回大会を“お祭り騒ぎ”で終えるのではなく、しっかりと考えるべきだろう。

酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
次の箱根駅伝で「関東学生連合」は走れない…なぜそんな重大事が学生不在の"密室"で取り決められたのか

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー