1月2日の号砲を待たずに、各大学の指揮官による腹の探り合いはすでに始まっている。

 12月29日、第98回箱根駅伝の区間エントリーがあり、各大学の1区から10区までの走者が発表された。区間エントリーからは、レース前から始まっている各校の駆け引きを見てとることができ、オーダーを見て様々な推察を巡らせることも箱根駅伝の楽しみ方の1つでもあるのだ。

前回大会スタートの様子 ©時事通信社

「どの大学もあまりに補欠登録の選手が豪華過ぎる。正直、最終オーダーがどうなるか、全く分からない…」

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 これが、区間オーダーを見た時点での率直な感想だった。

 実は当日のメンバー変更に関して、前回大会からちょっとしたルール変更があった。補欠登録の人数自体は以前と変わらず6人だが、前々回までは往路・復路合わせて4人までしか交代できなかったのが、6人をフルで交代させることが可能になった(ただし、1日に変更できるのは最大4人まで)。

 当日変更は、もちろん病気やケガなど突発的なアクシデントへの措置でもある。だが、交代可能選手が増えたことで、いっそう戦術的な意味合いも増した印象がある。おそらく今年は各大学の首脳陣とて、29日の区間エントリーを見た限りではライバル校の手の内を読めずにいるのではないだろうか。各校がどういう布陣を築いてくるか、予想を立てながら最終的なオーダーを決めていくことになる。

優勝候補の駒大・大八木監督と青学大・原監督 ©文藝春秋

“華の2区”には奇策なし。各校順当にエースが配置

 まず、エースが集う“華の2区”に限っていえば、29日の時点では意外に順当に各大学のエースたちが配された印象がある。

 箱根駅伝の2区は「エース区間」のイメージが強いが、23.1kmの長丁場である上、14kmからの権太坂に加え、ラスト3kmにも急激な上り坂が待ち構える難コース。テクニカルなコースゆえにコース適性も求められるため、実は必ずしもチーム内で持ちタイムが上位の選手が起用されるとは限らない。戦略によっては、出遅れが許されない1区やトラックのスピードを生かしやすい平坦な3区、細かいアップダウンが続く難コースの4区など、往路の他区間にエースを起用するケースも多いのだ。

 だが、今年は優勝候補校がしっかり2区に1番手のランナーを置いてきている。