ついに自殺者も……。そして擁護し続けた麻生氏は
昨年7月、佐川氏は国税庁長官に任命された。佐川氏は通例の就任に際する記者会見を開かず、“逃亡”を始める。「諸般の事情により行わないことにした」という国税庁の説明も話題を呼んだ(東京新聞 2017年8月9日)。
佐川氏が就任後、国税職員向けの訓示で「文書の徹底管理」を指示していたことも報じられた。
「綱紀の厳正な保持に努め、行政文書・情報の管理の徹底に特段の配意をしていただく」
朝日新聞デジタル 1月10日
「まずお前が文書を徹底管理しろよ!」と思った人は少なくあるまい。野党側は再三にわたって佐川氏の国会招致を求めてきたが、与党は断固拒否を続けている。特に、安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相は、徹底的に佐川氏を擁護し続けてきた。
麻生氏は佐川氏が国税庁長官に就任したことについて、堂々とこう言い放った。
麻生太郎 副総理兼財務相
「(佐川氏は国会で)丁寧な説明に努めてきた。適材だ」
毎日新聞 2017年7月22日
「丁寧な説明」に一番遠い人物をよりによって「丁寧な説明に努めてきた」と評してしまうのが麻生氏らしい。今年2月15日の衆院予算委員会では「極めて有能な役人だ」と評してみせた(共同通信 2月15日)。
また、佐川氏を国税庁長官のポストに任命した安倍首相は、昨年12月4日の参院本会議で野党に批判されると、次のように反論している。
安倍晋三首相
「それぞれのポストに最もふさわしい人材を適材適所で配置する、という考え方に基づいて行った」
時事ドットコムニュース 2017年2月4日
しかし、かつては野党に対して強気の姿勢を貫いた佐川氏を「さえている」(『週刊文春』2017年7月13日号)と評価していた安倍首相も、最近は「佐川も定年だしね」と更迭を示唆していたという。佐川氏に責任を押し付けて首を切り、一気に問題の解決を図っていたようだ(『週刊文春』3月15日号)。
もともと森友学園問題は、安倍昭恵首相夫人が国有地に建つ予定だった小学校の名誉校長に一時就任し、行政側が忖度して不可解な値引きにつながったのではないかという疑惑から始まったものだ。
3月2日には、森友学園との契約時に財務省が作成した決裁文書が改ざんされて国会に提出された疑いがあると朝日新聞がスクープした。報道によると、原本には記されていた、森友学園側からの要請という部分や、特例的な内容となるという文言が削除、あるいは修正されていたという。報道が事実なら、佐川氏と財務省は組織ぐるみで公文書を改ざんし、隠蔽工作を行っていたということになる。
3月9日には、近畿財務局で森友学園との交渉を担当した職員が自殺したという報道があった。この報道が佐川氏の辞任とどう関わっているかはわからない。だが、一連の問題が佐川氏の辞任で幕引きとはいかないことだけは確かである。
麻生太郎 副総理兼財務相
「理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、混乱を招いた」
YOMIURI ONLINE 2018年3月9日
3月9日夜、緊急会見を開いた麻生氏が最初に挙げた佐川氏辞任の理由がコレ。自分で「丁寧な説明に努めてきた」って言ってたのに!