店によって大きく異なる「納車前の整備」
とはいえ価格表示が適正化されたとしても、「納車前の整備」をめぐる問題は残るだろう。消費者側としては当然、納車される車は「問題なく乗れる状態に整備されている」と思ってしまうが、実際の整備状況は店によってさまざまなのだ。大手の中古車ディーラーを経て、現在中規模の販売店に勤務するスタッフは次のように語る。
「中古車店のなかには、仕入れた車両をほぼそのまま売ることを前提にしている店もありますし、できる限り長く乗れる状態に仕上げたうえで売りに出すところもあります。ただ、現状渡しが必ずしも悪いわけではなく、お客さんに車両状態を説明したうえで『どこをどこまで整備するか』を相談しながら決めていくお店もあるんですが……」(中古車店スタッフB氏)
つまり、現状渡しを前提とする店であっても、買う側が「安く買えれば、あとは自分でメンテナンスできる」などと納得していれば、トラブルは起きにくいわけである。購入する店を決める際には、納車時の整備内容などについて質問し、「整備に対する店のスタンス」を見定めることが大切だ。
注意すべきなのは、上の規約改正後においても、表示価格に含める義務があるのはあくまで「納車に最低限必要な点検や軽整備」の代金だという点である。定期点検整備(法定点検とそれに伴う整備)など、比較的大がかりな整備を実施するかどうかは基本的に店の判断に委ねられるのだ。
ここで、整備内容を知るためにまず参考にしたいのは、価格表示における整備に関する付記である。2023年10月以降は、車両の価格表示にあたり、納車前に定期点検整備を実施する場合は「定期点検整備付き」などと記載し、これを表示価格に含めなければならない。そうでない場合は「定期点検整備なし」などと記載されるので、この表記からもある程度、整備の度合いを推し量ることができるだろう。
消費者には見えにくい「納車前整備のウラ」
しかし厄介なのは、表向きは「定期点検整備付き」とされていても、実際にどの程度の作業が行われているのかが消費者からは見えにくい点である。
「車検のための整備といって費用を上乗せしておきながら、実際にはほとんどそのまま、というケースは珍しくありません。一般の人からすれば、車検整備は大変だというイメージがあると思いますが、それは車検を通すだけではなく、2年間安心して乗れるように先回りした整備をしているからです。
業者側からすると、車検そのものは決まった項目をクリアすればいいだけなので、正直『通すだけならどうとでもなる』というスタンスの店もあるんですよね」(同前)