大切なのは“つらさの吐き出し方”
こうした実体験をもとに、もちぎ氏は続ける。
「だから逆に言えば、つらさに飲み込まれないようにするには、まずどんな形でもいいから“吐き出す”こと。解決するしないではなく、その行為自体が、大切なのだと思います。もちろん、つらいと誰かに伝えることはつらい。でも、何か自分に合った方法があるはずです。
“吐き出す”とは、必ずしも信頼できる相手に打ち明けるという形でなくてもいい。信頼できる相手だからこそ、関係性を崩したくなくて相談できないケースも往々にしてあります。
そうした場合は、プロのカウンセラーでもいいし、同じ悩みを持つ人でもいい。相談までいかずとも、ひとまず冷静さを取り戻すまでつらさの原因から距離を取るのも、吐き出し方のひとつだと思います。SNSや日記に書き残すのもそうですし、訴訟という形で社会に問うのも、方法のひとつ。
人によって、あるいは状況によって、選択する方法は異なるとは思いますが、社会が受け皿を用意することと同じくらい、個々人が自分なりの“つらさの吐き出し方”を見つけることも大切だと感じます」
生きづらさは人の数だけある
もちぎ氏の最新作には、さまざまな“つらさの吐き出し方”を通じて、自分なりに生きづらさと折り合いをつけた人々のエピソードが11篇収録されている。
「なにが正解だとか、こうすべきだとか、答えを示すように描くことだけは避けました。今はすぐに正解がないと不安でストレスだという人も少なくありませんけど、ぱっと解決するくらいなら悩まないし、他人の受け売りが自分の身にしっくりくる保証はどこにもありません。生きづらさは人の数だけありますから、バーで飲みながら四方山話に参加するくらいの感覚で、気軽に読んでもらえたら嬉しいですね」
つらいと言うのがつらくても、抱え込まずに吐き出せば、生きることが少し楽になるかもしれない。