約2300件もの強盗・詐欺事件に関わっていたとされる特殊詐欺組織“ルフィグループ”。9月26日、フィリピンから詐欺の電話をかける“かけ子”として活動し逮捕された藤田海里(24)の初公判が行われた。逮捕後は取り調べに黙秘を貫いていた藤田は一転、容疑を認め、詐欺グループの恐怖支配や、ともに逮捕された交際相手、熊井ひとみ(26)との関係について饒舌に語った。

 実は、熊井は今年1月に妊娠が発覚し、約1ヶ月前に出産している。まだ我が子を目にしていないという藤田は、今後について問われ、こう答えた。「できれば自分たちの手で育てていきたいなとは思っています」――。(前編を読む

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 藤田が日本に一時帰国したのは、2019年8月10日のことだった。幹部に「日本のブランド品を買い付けてこい」と命じられたのだ。東京都内の実家に立ち寄った藤田は組織からの逃亡を試みる。だが、すぐに執拗な呪縛が包囲した。

「すぐに『今井』こと小島から電話がかかってきて『すぐ家の外に出るように』と言われて家の外に出たら今井の部下だという者がいて、その者から『見張っているから逃げたりしないように』と強く言われて……。本当に見張られているんだという感情になって、警察などに言うことが出来ませんでした。帰国前、『もし警察などに駆け込んだら親兄弟などに危害を加える』と言われていたので警察に言うこともできなかった」(藤田の法廷証言)

藤田容疑者

 公判で弁護人から「逃げることはできなかったのか」と聞かれると、藤田は繰り返し「捕まって何かされるということが怖くて出来ませんでした」と顔を歪ませるのだった。だが、地獄の日々を漂いながら藤田が心の拠り所にしていたのが、熊井と共に過ごす刻だった。

 熊井の祖父は、高知県議を5期務めた地元の名士だった。会社員の両親のもと、3人きょうだいの末っ子として育てられた熊井は高校卒業後、多摩美術大に進学。全国の大学新入生を対象とした「ミスフレッシュキャンパス」に応募し、将来の夢として「人を笑顔にする仕事がしたいです」と語った。だが、熊井は次第に迷走を始める。

ミスフレッシュキャンパスに出場し、ファイナリストに選ばれた熊井容疑者

 パパ活に精を出し、グッチやルイ・ヴィトンなどの高級ブランド品を買い漁った。3年時に退学すると、淫奔な日常に漂い、周囲との関係を断ち切った。19年、熊井はフィリピンに渡航し、詐欺グループの一味に成り果てたのだ。