思い出の曲にも罪はない
ホークスに行ってもファイターズの頃からの登場曲を近藤選手は変えなかった。PayPayドームの試合中継、ラジオからその曲が流れれば条件反射、コールされる前に近藤選手だとわかる。シーズン序盤はその度にお願いだから変えてほしいと願っていたけれど、元カレと変換するようになってからは勝手にこんな風に妄想した。
別れてからも生活環境から度々顔を合わせてしまう私達、共通の知り合いも多い。カレは気に入ってるからという理由でいつまでも私のあげたプレゼントを使い続けている。困るんだけど、と思いながらも私は気にしない「ふり」をしている。きっとカレは言うだろう、「ものに罪はないからさ、俺たちは離れても」。
仰る通り。そうだね。だから思い出の曲にも罪はない、そして私はもうカレに口出しをする立場にない。聴こえない「ふり」をすればいいだけだ。
お互いがあの時以上に輝いていればそれはなんてハッピーなことだろう
近藤選手は今シーズン143試合すべてに出場した。レギュラーシーズン最後の試合の最終回でホームラン、これがキャリアハイの26本で初のホームラン王への1本だった。87打点で打点王、球団記録更新の109個の四球を選び出塁率は12球団トップの4割3分1厘、打撃タイトル3冠となった。この活躍を、正直、私は嬉しく思っていた。ホークスと大きな大きな契約を結んだ近藤選手、きっとプレッシャーもあっただろう、それを跳ねのけてのこの数字。
近藤選手はますます進化している。近藤選手にあの時にチームを離れなければよかった、なんて思ってもらおうとは望まない。かつていたチームに誇りを持ってもらいたい、そのためにファンが出来ることもきっとたくさんあるはずだ。別れてしまったけれど、お互いがあの時以上に輝いていればそれはなんてハッピーなことだろう。
因みに、私の言う「元カレ」の条件はFAでチームを離れた選手。トレード、構想外は含みません。
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