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「100円で買い取った怪談話」で日本トップ10の音声番組に…尼崎で「怪談売買所」を開く男性店主の半生

source : 提携メディア

genre : ビジネス, ライフスタイル

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2015年、怪談好きの女性と結婚。妻が住む長野に移住し、現地でヘルパーの仕事をしながら、関西に通って怪談ライブを続けていた。しかし、7月から9月の間は毎週末、怪談ライブが入り、行き来がハードになる。

次第に身体に堪えるようになってきて、「もうこんなん嫌や」と2019年、妻を連れて尼崎へ。長野に移住する前に働いていた会社に復帰させてもらい、ここでもヘルパーの仕事に就いた。同年、「怪談で世界平和を目指す」という理念を掲げ、NPO法人宇津呂怪談事務所を設立する。

「人ってなかなか死ぬことについて考えないじゃないですか。でも、人はいつか死ぬんですよ。ひょっとしたら明日死んじゃうかもしれないですよってなった時に、もっと死を身近に考えましょうねと。死を身近に考えることは、生きることを考えることにも繋がります。生きることを考えたらその人の生活は変わってくるし、人生良くなるはずやっていうのが根底にあるんですよ。そのきっかけとして怪談はぴったりなんです」

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「ほんとに生きててよかった」と思える瞬間

尼崎に戻って4年、宇津呂さんは今年3月いっぱいでヘルパーの仕事を辞めるはずだった。怪談ブームもあって昨今は一年中、日本各地で怪談ライブが行われている。2021年にはポットキャストの音声番組「100円で買った怪談話」がSpotifyで総合7位に急浮上、今年7月には書籍『怪談売買所〜あなたの怖い体験、百円で買い取ります〜』(ライツ社)を発売するなど、宇津呂さんも活躍の場が増え、50歳にしてついに怪談師と怪談作家の収入で生活できる目途がたったのだ。

現在は職場から求められて週2、3回働いているが、来年3月には退職予定。「怪談で食べていくって、子ども時代からしてみたら、想像つかないのでは?」と尋ねると、大きくうなずいた。

「僕もそれが仕事になるとは、みじんも思っていませんでした。やっぱり、怪談が好きっていう気持ちが大きいのかなと思ってまして。ほんまに自然と、怪談って面白いな、好きやなっていう思いが心の奥の方から溢れ出してくるんですよ。それに衝き動かされて今までやってきたので」