京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。
そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 幽冥の門篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「死んでます?」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。
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不思議な体験をしたという方々から、色々とお話を聞かせていただいておりますと、怪異体験をされる場所に、一種の偏りのようなものがあることを感じます。
たとえば、当たり前に思われるかもしれませんが、病院やトンネルなどの心霊スポットや、廃屋、廃村などで怪異に遭遇することが多いように思います。もちろんこれは、そう言った場所で必ず霊的現象が多く起きるということの証明にはなりません。
と言いますのも、廃屋や廃村は、人気のなさや、崩れかけた家屋に、死という観念を持ちやすく、自然現象に対して恐怖を感じ、心霊現象と結びつけてしまうことがあるからです。
次に多いのは、山です。山での不思議な体験は数多くお聞きしております。もちろん、山という場所も、暗闇があったり、木々の揺れる音や動物の気配などを勘違いして、心霊現象だと決めつけやすい色々な要素があるように思います。
大学生4人が心霊スポットへ
さて今回は、ある山で起きた怪奇現象のお話です。しかも、この山はただの山ではなく、心霊スポットとしても有名な場所なのです。
この場所は、地元では登山をする人の多い山ですが、年間数名の行方不明者が出ていました。そして、夜遅くに訪れると「おーい、ここにいるよー」という声が、どこからともなく聞こえて来る……という噂がありました。
「実は、僕は行きたくなかったんですが、僕しかいなくて……」
そうお話しくださったのは、大学生のAさん。仲の良い男だけ4人のグループでこの山に行くことになりました。気が進まないAさんが加わることになったのは、4人の中で唯一、車の免許を持っていたからです。
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最初に誘われた時には、かなり迷ったんです。もともと怪談話やホラー映画などが怖くて苦手なんです。
それでもこの山に行こうと友達が言い出した時には、怖がっていると思われるのが何となく恥ずかしくて、行くことにしました。
家を出発したのは、深夜1時を過ぎた頃でした。父親の軽自動車を借りて、僕が運転して出発しました。