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2022/08/16

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書,

曲がりくねった山道を行くと…

 目的の登山口までは、曲がりくねった山道を暫く走らなくては行けません。街灯の少ない山道は、これから向かう心霊スポットへの入り口のように感じられました。それに、長年父親が乗って年季の入った軽自動車に、男性4人が乗り、おまけに傾斜のきつい山道とあっては、アクセル全開でも、さほどのスピードは出ません。街灯の明かりが車内に差し込んでから、次の街灯までの時間がやけにゆっくりと感じられて、これも僕の恐怖心を増幅させていきました。

 怖がっていることを友人達に悟られないように、車の中では、あえてアップテンポな音楽を掛けていました。

 ところが、友人の一人が「せっかく心霊スポットに行くのだから、怪談話をしながら恐怖度最高潮で行こう」などと言い出したのです。

 こいつ、何言ってんだ! 今すぐにでも引き返したい衝動に駆られましたが、場の雰囲気を壊したくはない。僕は友人のする怪談話を出来るだけ聞かないように集中して、他のことを考えながら目的地へと向かいました。

写真はイメージです ©iStock.com

ようやく目的の山へ到着

 それからしばらくして、ようやく目的の山へと到着しました。山には駐車場があり、そこに車を停めました。駐車場には、古びた街灯が一つだけポツンと立っており、その下だけが照らされて、不気味さを醸し出していました。

 それを見た友人達もさすがに怖くなったのか、駐車場から登山口まで、車で行こうと言い出したのです。

 駐車場から山の入り口まで、一本の道があるようです。ただ、舗装されていない、まさに山道が延びていました。

 仕方なく僕は車をその道に進めました。舗装がなくなった砂利道に入ると、巻き上げた砂利が車に当たって、カンカンという音が車内に響きました。

 ある程度進むと、乗用車が一台だけしか通れないほどの細い道になってきました。それでも行けるところまで行こうと、更に車で進みました。

 しかし、砂利道も途中で、大きな石や岩のような物も出て来て、車ではさすがに此処までと言う限界まで来たのです。

 さすがに車はここまでだな。友人達も「ここからは歩いて進もう」と言うので、車を降りることにしました。