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性的快感があるからといって「合意」ではない…身体反応がわかりやすい男性の性被害で加害者が取る巧妙な手口

source : 提携メディア

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つまり、性暴力被害の最中に「触られたくない」「気持ち悪い」「怖い」「悲しい」「痛い」といったさまざまな不快な感覚や感情があり、全く望まない状況であると認識していても、性的快感が生まれる可能性があるということです。

実際、男性や男児に対する性暴力において、勃起や射精へと至らせる行為は珍しいことではないと、これまでの研究で明らかになっています。先ほど触れたように、性的快感を暴力の手段として使うことで、加害者は被害を受けた人の感覚をも従属させた気分になれます。

女性ももちろん性的快感を被害の最中に抱いていることがありますが、男性に特徴的なのは、その感覚を勃起や射精という生理的な現象によって簡単に知られてしまうという点にあります。そのときに加害者は「本当は気持ちいいんだろう」「身体は正直だ」などと、あたかも本人がそれを楽しんでいたり望んでいたりしたかのような言動をとることがありますが、これも巧妙な加害者の策略です。

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男性が「挿入させられる」という被害は想像されない

そこに被害者も自ら積極的に関与しているかのように思わせて、性を利用した暴力であること、自分の加害行為を隠そうとしているのです。なお、現行法でも勃起や射精が起きたことが、同意を示しているとは考えられていません。

異性間の関係が想定されている性交では、挿入する側として男性が想定されており、挿入される側として女性が想定されています。このことが二つ目の特徴です。この男女間の性関係において、性的能動性は常に男性のペニスに還元されます。

つまり、勃起しているなら、それは挿入したいのだ、射精をしたいのだ、という短絡的な論理です。これは、男性の身体に起きている生理的な仕組みや、感覚、感情、認識といった複雑な関係を度外視して、男性の性をすべてペニスに還元する見方です。

また、「挿入させられる」という被害の形態は想像されません。自らの勃起したペニスを入れたのだから、それは本人がしたかったのだろうという結論になってしまいます。そうすると、男性はペニスを持っているから被害者にはならないということになってしまいます。

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