1713年に出版された健康書の古典『養生訓』の著者は医師の貝原益軒。その冒頭では「健康こそ人生最高の幸福である」とあり、「幸福になるために人はどう生きるべきか」が解き明かされる。内科医の奥田昌子さん編訳の最新版からそのエッセンスをお届けしよう――。

※本稿は、貝原益軒『病気にならない体をつくる 超訳 養生訓』(奥田昌子編訳・ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

貝原益軒の肖像(画像=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

知恵を得るには長生きせねばならぬ

若いうちは衝動に駆られやすく、知恵も足りない。歴史を知らず、社会の変化にも慣れていない。勘違いして、あとになって悔やむことも多いし、物事の筋道も人生の楽しみもわかっていない。

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長生きすれば毎日のように新たな発見があり、できなかったことができるようになる。こうなって初めて学問や知識を深めることができるのだ。だからこそ養生に努め、何としても長生きしなければならない。養生の道を極めようと固く心に誓えば、寿命は延ばせる。

(巻第一 総論上)

健康長寿は金儲けや立身出世よりたやすい

金儲けや立身出世を夢見て人に媚びたり、神仏にすがったりする人は多い。一方、健康長寿を目指して養生に努める人はめったにいない。金儲けや立身出世には他人の力が関わるから、自分だけでどうにかなるものではなく、頑張ってもたいていはうまくいかない。これに対して無病息災は自分の体のことなので、その気になれば実現しやすい。

手に入れにくいものを追い求め、手に入れやすいものに目を向けないのは愚かなことだ。そもそも、たとえ地位や名声を得ても、病気がちで短命だったら何にもならない。

(巻第一 総論上)

欲に負けると長寿の道を踏みはずす

体は本来、100年でも長持ちするものだ。それを、欲をいっとき我慢しなかったことで壊してしまうのは、あまりにももったいない。

末永く安泰で長生きしたいと思ったら欲求に流されてはならない。欲にまかせるか、欲をこらえるかが、長命と短命の分かれ道である。