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「私だけじゃないんだ」

 ヨシタケ でも、仰る通りで、僕自身、逃げ道がほしいんですよね。自分が言ってほしいこと、言ってほしかったことを言っているだけというか。できないことばかりで、うまくいかないことばかりだったから、子どもの頃こういうふうに言ってもらえたら助かっただろうにって。よく言うのは、自分用の松葉杖を作っている感覚なんです。世のため人のためではなくて、「僕だったらこう言ってもらえたら助かるんですけど、どうですかねえ?」と提案していくことしか、僕にはできない。

ヨシタケシンスケさん(本人提供)

 上白石 私、『あつかったら ぬげばいい』(白泉社、2020年)が大好きで。バイブルと言っていいくらい読んでます。「もしこうだったら、こうすればいい」の提案が、必ずしもいい子のやり方ではなくて。人の不幸を願ってしまったら、〈なみうちぎわに かけばいい〉とか。「こういうこと思ってる人、私だけじゃないんだ」ってすごく力が抜ける。かと思えば、思いもつかないような素敵な発想も詰まっていて。いちばん好きなのが、〈おとなでいるのに つかれたら〉〈あしのうらを じめんから はなせばいい〉という言葉。

 ヨシタケ 嬉しいです、すごく。

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 上白石 初めて読んだ時ハッとしました。たったこれだけのことで、子どもに戻ったような、重力から解放された気持ちになれた。妹(上白石萌歌)もヨシタケさんの絵本が大好きで、そのページが好きで。だからよく一緒にごはんを食べに行った帰りに、「ちょっと足の裏、地面から離そう」って、寄り道してブランコ乗ったりするんです。アハハ。

上白石萌音さん「姉妹揃って絵本が好き」 Ⓒ文藝春秋

 ヨシタケ 嬉しいなあ……。

 上白石 それくらい、日常のちょっとした局面でヨシタケさんの言葉や絵が浮かんでクスッてなったり。「あ、いまだ!」というヨシタケさんの登場場面が、私の生活にはたくさんあります。

 ヨシタケ すごくちゃんと読んでくださって。

 上白石 ちゃんと読んでます! 『日々臆測』(光村図書、2022年)も大好きです。ヨシタケさんの日々の臆測が冴え渡る……。読んでいると、結局、自分の思考次第で日常はいくらでも面白くできるし、「いい子ちゃん」じゃなく、自分のまんまで、自分の考えたいようにやっていいんだと思わせてくれる感じが、大好きなんです。