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芋焼酎で仕込んだ梅酒と、レーズンバターは永遠に飲める…! 噺家・蝶花楼桃花が酒の席で学んだ人生の機微〈赤兎馬(せきとば)噺 私の本格 第五席〉

芋焼酎で仕込んだ梅酒と、レーズンバターは永遠に飲める…! 噺家・蝶花楼桃花が酒の席で学んだ人生の機微〈赤兎馬(せきとば)噺 私の本格 第五席〉

SEKITOBA STYLE #5

2024/02/21
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 この人が高座に上がると空気がパッと華やぐ。豊かな表情、歯切れの良い口調、そして軽やかな身のこなし。蝶花楼桃花(ちょうかろうももか)師匠は、“寄席のプリンセス”として今最も注目を集める女性落語家の一人だ。

 ミュージカル俳優を目指し劇団の研究生として活動していた頃、講義で初めて耳にした落語にドはまり。なんとしても落語家になりたいと、春風亭小朝師匠の門を叩いた。女性の落語家は全体の4~5%ともいわれる落語界で厳しい修業時代を乗り越え、17年目の2022年、落語協会における10人目の女性真打に昇進を果たしている。

2022年3月、真打昇進を果たした蝶花楼桃花師匠。落語協会としては10人目の女性真打。©御堂義乘
2022年3月、真打昇進を果たした蝶花楼桃花師匠。落語協会としては10人目の女性真打。©御堂義乘

師匠の愛情ある“課題”の数々が、ここまで自分を育ててくれた

 落語の一門にはそれぞれ弟子の育て方がある。小朝師匠の場合、入ってきた弟子が何を苦手としているか、何が必要かを見きわめ、一人ひとりに合った育て方をするのだという。

「弟子入りして2カ月後から高座に上がらせてもらったのですが、私の場合、高座が近づくと師匠がよく『あの話をやってね』とネタを指示してくれるんです。ですから、いつ何を言われてもいいように、あらゆるネタを常に準備しておかなければならないんですよ。たぶん、私が怠け者だということを師匠が見抜いていたんじゃないかと思います」

 しかも小朝師匠は、できるかできないか、超えられるか超えられないかというギリギリの線を突いた課題を与えるのがうまいのだという。

 「だから、その時は『そんなの無理無理!』と思った課題も、なんとか乗り越えて5年後ぐらいに『師匠が言いたかったのはこういうことだったのかな』とやっと分かる。真打になるまでそんなことの繰り返しでしたが、それがあったからここまで来られた。やっぱり師匠はすごいな、と思いますし、深い愛情を感じます」

 とはいえ、なんといっても落語界はまだまだ男性社会、落語ファンの中にも「女性の古典落語なんて聞きたくない」と言い切る男性は少なくなかった。

 「師匠からも、入門して最初に『女性に古典落語は難しい』と言われました。だから、もし私が『真打を目指す』と言ったら、弟子にしていなかったそうです。でも私は、別に真打になれなくても落語ができればそれでいいって思っていて。それを正直に師匠に言ったら、弟子にしてもらえたんです。女性であることのデメリットも分かってくれたうえで、『だからこそ君の表現をやりなさい』と。女性の声で落語を長時間聞くのはしんどい時もあるのでここまで音程を落としなさいとか、女性にありがちな語尾がちょっと上がる癖を直しなさいとか、徹底的に指導してくれました」

 師匠との出会いは運命でした、と語った桃花さん。「カッコつけて『真打になるまでコツコツ頑張ります!』なんて言わなくてよかった~」と明るい笑顔を見せた。

「梅酒と柚子酒。どちらも本格焼酎『赤兎馬』というベースがあってこそのおいしさです」
「梅酒と柚子酒。どちらも本格焼酎『赤兎馬』というベースがあってこそのおいしさです」

梅酒と柚子酒、どちらも相性ぴったりのおつまみを見つけました!

 真打になって2年。「懐深く人を受け止める寄席の雰囲気がたまらなく好き」と語る桃花さんにとって、毎日のように上がる高座はもはや日常。しかし、家に戻り、好きな芋焼酎のグラスを片手にひと息つくと、「あぁ、やっぱり気が張っていたんだなぁ」と気づくという。そんな桃花さんが最近出会ったのが、薩州濵田屋伝兵衛「赤兎馬 梅酒」と「赤兎馬 柚子」だ。

 薩州濵田屋伝兵衛は、明治元年(1868年)に創業した伝統ある鹿児島の焼酎蔵。2000年に入り、新しい時代にふさわしい新しい芋焼酎を作りたいという想いから生み出したのが、本格焼酎「赤兎馬」だ。淡麗ながら芳醇、シャープながらフルーティという新しい味わいが魅力の「赤兎馬」に、実が大きく濃厚な鹿児島産の南高梅を合わせ、じっくり仕込んだ「赤兎馬 梅酒」は、毎年人気を集める季節限定品だという。

 「芋焼酎で仕込んだ梅酒なので芋の風味がガツンと来るのかなと思ったんですけど、そういう強さは全くなくて、とてもまろやかで飲みやすいんですよ。ロックでいただくと、梅のフルーティなおいしさがしっかり楽しめて、酸味もほどよい。あとから芋の風味がほんのり来る感じもいいですね。『赤兎馬』というベースがあってこその味わいだと思います」

 そんな「赤兎馬 梅酒」とのマッチングに桃花さんが推すのはレーズンバター。

 「和食にも洋食にもぴったりの梅酒なんですけど、レーズンバターと合わせてみたら、びっくりするほど相性が良いんですよ!  梅とレーズンの果実味がどちらも際立って、バターのまろやかなオイル分が梅酒のさっぱりさとまた絶妙なんです。梅酒、レーズンバター、梅酒、レーズンバターって、もう永遠にいけます」

 一方、鹿児島産の柚子をたっぷりと使用した「赤兎馬 柚子」はロックと炭酸割り、どちらの飲み方もお気に入りだそう。

 「軽やかでさわやかな味わいなのでロックでもついつい進んじゃいそうですけど、爽快さという意味では炭酸割りかなぁ。芋焼酎仕込みというイメージを良い意味で裏切ってくれる味わいですね。合わせるなら、ちょっとスパイシーなナッツがおすすめ。ナッツを食べて『赤兎馬 柚子』の炭酸割りを口に含むと、辛さがサーッと消えて口の中が爽やかに。それでまたナッツに手が伸び、さらに柚子酒のグラスにと、これも永遠に進んじゃうかも(笑)」

 話を聞いているだけでこちらも飲みたくなるほどおいしそうにお酒を語る桃花さん。師匠の小朝さんは体質的にあまりアルコールが強くないそうだが、他の師匠方や先輩たちとの宴席は、前座の落語家にとってとても大事な場だったという。

 「師匠方のグラスが空いていないか目を配ったりとか、『この師匠は空いたお皿を重ねるのがお嫌いだったな』などと気をつけながらテーブルを片付けたりとか、やることは山ほどあります。しかも、前座はいちばん最後に食べ始めて誰よりも先に完食しないといけないっていう暗黙のルールがあるんですよ。もちろん食べる量も男性と同じなので、入門してからあっという間に10キロぐらい太りました(笑)。でも、落語家としての礼儀作法とか、その場の機微の察し方とか、他では学べないことが学べる場でもあって、私はすごく好きでした」

普段から芋焼酎をよく飲むという桃花さん。自分の名前入りの芋焼酎をお世話になった方たちに配ったこともあるという。
普段から芋焼酎をよく飲むという桃花さん。自分の名前入りの芋焼酎をお世話になった方たちに配ったこともあるという。

私から生まれる表現はすべて私の個性。そのまま伝えていきたい

 師匠からも「女性に古典は難しい」と言われた桃花さんだが、真打となった今では、そうした不安を感じさせない堂々たる高座ぶりで古典も新作も演じている。

 「もはや私は開き直っていますね(笑)。基本的に性別は変えられませんから、私が女で落語をやるということは変えようがない。それを含めて、私を通して出ていくものが、絶対的な個性になるんですよ。だから、すごく傲慢に聞こえてしまうかもしれないけど、私から出るものをそのまま受け取ってもらいたい。ですので、そのままのネタを私の感性で表現することを心がけています」

 たとえば、師匠である小朝さんの持ちネタであり桃花さんもよく高座にかける「こうもり」も、傷ついたところを人に助けてもらったこうもりがあおいちゃんと名乗る女性となって恩返しをするというストーリーが、桃花さんが演じることでいっそうイキイキと動き出す。あおいちゃんの可愛らしさや明るさ、ふとした時に見せる狂気は、女性だからこそストレートに伝わってくる表現といえるだろう。

 「私だって男性になって落語をやってみたかったなと思うこともありますけど、『こうもり』のあおいちゃんを『可愛らしい』と見てくださるお客様がいらっしゃるんだったら、それは私が女性だからこそ得をしているところですよね。逆に、男性の落語家だって男性としての個性がプラスになることもマイナスになることもあるわけで、プラスマイナスゼロという意味では男性も女性も一緒じゃない?って」

 一方、2023年には寄席定席としては初の試みとなる女性芸人だけの「桃組」興行を成功させるなど、女性落語家としての新たな取り組みにも積極的だ。

伝統に対するリスペクトと新しい挑戦が本格の味わいを生む

 そんな桃花さんにとって、「本格」と呼べるものとはどんなものだろうか。

 「古典を守り続けることだけが本格だ、というイメージを持っている人は少なくないかもしれませんが、新作落語に向き合っている落語家も、古典落語を一切やらないという落語家も、私は本格だと思います。落語に対しての揺るぎないリスペクトがあれば、どんなに斬新なことをしても、絶対にめちゃくちゃにならない。師匠の小朝も若い時にドカンと売れた人ですから、その看板を背負っていくのは相当大変なことだったと思いますが、常にその時その時に春風亭小朝としてできることに挑戦しているんですよね。CDなどの音源も『後で聞いたら絶対に満足できないから』と決して残さない。そういうところは格好いいし、見事だと思います」

 それは、「赤兎馬 梅酒」「赤兎馬 柚子」にも感じたことだと桃花さん。

 「焼酎蔵の伝統をしっかり持ちながらも、これまでの実績や既成概念に満足せず、常に挑戦を続けるからこそ、新しい味わいが生まれるんですよね。それこそが本格の姿。私自身、なんとしても落語家であり続けたいという執着のような強い想いがありますので、そのためにも常に新しい挑戦を続け、課題を乗り越えていきたいと思います」

左:薩州 赤兎馬 梅酒/右:薩州 赤兎馬 柚子
左:薩州 赤兎馬 梅酒/右:薩州 赤兎馬 柚子

赤兎馬についてはこちら

【プロフィール】
ちょうかろう・ももか●2006年、春風亭小朝に入門、2007年より春風亭ぽっぽとして前座修行を開始。2011年、二ツ目に昇進し、春風亭ぴっかり☆と改名。10日間連続独演会、全国ツアー、海外公演などの落語活動のほか、テレビ、ラジオ、舞台、映画にも出演。2021年「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年、真打昇進、蝶花楼桃花と改名。9月には女性として史上初めて「笑点」レギュラー大喜利に出演。2023年には全出演者女性芸人の主任興行「桃組」(浅草演芸ホール)を成功させる。2024年4月「春の独演会」を東京・名古屋・大阪で開催予定。

提供:濵田酒造株式会社 焼酎蔵 薩州濵田屋伝兵衛
https://www.sekitoba.co.jp/

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