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憧れの官軍 しかし実態は“へぼ侍”だらけ
すぐにでも武勲を立てようと勇む錬一郎だったが、配属されたのは銃兵部隊。なんと、武士の魂である刀ではなく、銃を取り扱う部隊だった。さらに、そこに集うのは、京出身の華奢な料理人に博打好きな巨漢、さらには勘定専門のインテリ男。錬一郎以上に“へぼ侍”なクセだらけの男たちだった。
「なんだか思い描いていたものと違う……」
そんな理想と現実のギャップに落胆しながらも、奉公で培った商人のスキルと決して消えることのない武士魂で現状に立ち向かう錬一郎の姿はとにかく熱い。生まれや育ちが違う隊員たちと衝突しながらも、最終的には各々の特技や持ち味を活かして西南戦争を駆け抜けていく様は痛快でもある。
原作は坂上泉氏による同名タイトルの小説で、『地獄堂霊界通信』『しゃばけ』などで知られるみもり氏によってコミカライズされた本作。マンガのキャラクターとして描かれることで、錬一郎を始めとする個性豊かな隊員たちが一層賑やかに、そしてちょっぴり抜けているけれどどこか愛おしい。そんな青春コメディとしての魅力にも溢れている。
『へぼ侍』を読んでいると、今までの当たり前が終わり、新しい何かが始まる……スケールは違えど、“変化のうねり”はどの時代の人間も繰り返しぶち当たってきた壁なのだと気付かされる。それと同時に、新たな時代を駆け抜ける勇気と小さな灯を錬一郎たちが私たちに授けてくれる気がする。