いよいよ大型連休ですね。今年のゴールデンウィーク中に観られる映画は、スティーヴン・スピルバーグの新作『レディ・プレイヤー1』や、マーベルの待望の新作『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』、アカデミー脚色賞受賞作『君の名前で僕を呼んで』等々、話題作に恵まれています。ぜひこの記事でオススメする2本も含めて、レジャーの合間に映画館へ行くスケジュールも立てちゃいましょう。
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韓国政府がメディアによる報道を徹底統制した実話
4月21日公開の韓国映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、ポスターなどのメインビジュアルはほのぼの人情系な雰囲気ですが、内容は1980年5月に起こった光州事件の際の実話を扱っています。
物語は学生デモで揺れるソウルの街から始まります。個人タクシーの運転手マンソプ(ソン・ガンホ)は、光州に行ったら大金を支払うという話を聞きつけて、ドイツ人記者ウィルゲン・ヒンツペーターを乗せて光州に車を走らせます。しかし道路は軍によってものものしく封鎖されており、マンソプたちは山道を抜けて苦心のすえ光州へ入りますが、そこで目撃したのは軍部の銃撃によって、武器を持たない市民が惨殺されていく光景でした。
光州事件はメディアによる報道が政府によって徹底的に統制された案件であり、国内では暴動と報じられていました。そんな中を命懸けで潜入し、海外で報道したウィルゲン・ヒンツペーターと、軽い気持ちでソウルからやってきたタクシー運転手が、軍事制圧によって自分の命も危険にさらされてしまう姿を描いた作品です。夜間の描写が特に怖くて、催涙ガスなどでけぶる町が淡い光に浮き上がる中、突然炸裂する銃撃音と逃げまどう人々の影が錯綜する様子は、まるでホラー映画のよう。
朴槿恵前政権時代に作成された「ブラックリスト」
ソン・ガンホは朴槿恵前政権時に作成された、政府に批判的な文化人をあげた「ブラックリスト」に名前があったと報じられました。目をつけられたら公的支援から外されるかもしれない、恐ろしいリストです。確かにソン・ガンホの出演作は、政府に迎合しない人物を演じた作品が目立ち、本作もその代表的な一本です。でも決して堅苦しくはなく、ユーモラスですっとぼけた愛すべきキャラクターぶりは健在。明朗かつ奥深い名優としての力を、惜しみなく発揮している社会派な作品です。