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小林製薬“猛毒サプリ”、76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは

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 ポイントは3月22日の社長会見にあると指摘するのは企業問題に詳しい加藤博太郎弁護士だ。

「雪印の事件では、社長と専務は『予見不可能だった』として不起訴となりました。小林製薬も会見で『未知の成分』という言葉を使っており、健康被害が起こるとは予見ができなかったという点を主張しようとしているのではないか」

 2つ目の壁は、死亡疑いの数すらまともに報告しない小林製薬の「隠蔽体質」である。

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 07年、表示義務のある原料名を表記せずに栄養補助食品を販売していたことが発覚。小林製薬は客からの苦情が出ても調査すらせず放置していたという。発売から5年半ほど経ってから回収に動き、「原因が分からず、対応が遅れていた」と釈明したこともある。

 同社の元社員が証言する。

「Kさん(小林一雅代表取締役会長の愛称)が、恐ろしいから、クレームでもなんでも最初は隠してしまうところがある」

小林一雅会長

“隠蔽工作”は過去にも

 彼が在職中も、“隠蔽工作”が行われたことがあったという。

「1990年代のことですが、当局による税務調査が入ることになった際に、当時の経理部長が、『まだ許可を得ていないものを輸入していたことが分かる書類がある。バレたらまずい』と本社の女性更衣室に隠したこともあった。今回の一件も、『都合が悪いことは黙っておけ』という会社の姿勢の表れではないか」(同前)

 

 小林製薬に、死亡者数や過去の税務調査時の“隠蔽疑惑”などについて質問したところこう回答があった。

「6月13日に厚労省には、報告すべき事案はございませんと回答いたしました。その後、報告・公表のあり方の見直しを加速させ、報告に至りました。(過去の税務調査については)回答を差し控えます」

 包み隠さず事実関係を明らかにする姿勢が、あったらよかったのだが。

小林製薬“猛毒サプリ”、76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは

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