小林製薬の紅麹原料を使ったサプリメントを摂取した人に健康被害が出ている。科学ジャーナリストの松永和紀さんは「機能性表示食品は『健康によさそう』『医薬品に似ている』というイメージから安全性が高いと勘違いされがちだ。しかし、実際は安全性のチェック制度に重大な欠陥がある」という――。

「紅麹コレステヘルプ」を飲んでいた2人が死亡

小林製薬が3月22日、「機能性表示食品」として販売した紅麹のサプリメントの使用中止を顧客に呼びかけ、関連5製品の自主回収を始めました。摂取していた人たち13人に腎疾患やむくみ、倦怠(けんたい)感などの健康被害が確認されたというのです。うち6人は入院しました。

摂取者に腎疾患などの健康被害が確認されたとして自主回収が進められている機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」(小林製薬プレスリリースより)

25日には別に20人が入院していたこと、26日には死亡との因果関係が疑われる事例が1件あることを公表し、厚労省が2人目の死亡も明らかにしました。入院患者もさらに増え続けているようです。

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原因はカビから産出された物質?

同社の紅麹は食品原料として約50社にも供給されており、他社の酒や塩辛、菓子などの自主回収も始まっています。症例との因果関係はまだはっきりせず、原因物質も不明ですが、摂取した時期や製品などから、同社は問題のある製造ロットを特定して分析し、カビから産生された物質ではないか、と発表しました。同社は複数の大学と協力して、この物質を特定すべく調査中、とのことです。

機能性表示食品は、国が審査するのではなく、企業が自身の責任で安全性を確認して機能性を表示する制度です。2013年、当時の安倍晋三首相が規制改革の一環として「世界で一番企業が活躍しやすい国の実現」を高らかにスピーチして制度創設を宣言し、15年から制度が始まりました。

当初から安全性や機能性の根拠の弱さなどが指摘されていましたが、今回の“事件”は、問題点が端的に表面化したようにも思えます。この事件を、科学と制度からどのようにとらえたらよいのか、解説します。