超高齢社会を迎えた今、世間では玉石混交な高齢者向け商品が供給され続けている。市場に溢れかえっている商品は、はたして玉なのか石なのか。消費者はいったいどのように見極めればよいのか。

 ここでは、『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』の一部を抜粋し、高齢者向け商品を購入する際に注意すべきポイントを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む

◆◆◆ 

ADVERTISEMENT

おすすめできない「サプリメント」

 フレイル、認知症を現実のものとして感じる以前に、多くの人が加齢による身体変化で実感するのが、視力と関節の不具合ではないでしょうか。大学を卒業して30年が経つ私もその一人です。久しぶりの同窓会に出席すると、旧友どうしが容貌の変化を指さし合って大笑いしながら、互いに加齢とともに生じてきた不具合を愚痴り合う(自慢し合う?)という光景もよく見かけますよね。

 外来で一般内科の患者さんを診察していても、「内科よりも今一番の悩みは膝の痛みなんです」という変形性膝関節(しつかんせつ)症に悩む高齢者は少なくありません。整形外科で膝にヒアルロン酸の注射を定期的におこなっている、あるいは接骨院でマッサージや電気治療をしているという方にも日常的に遭遇します。

 これらの方々の中には「なかなか良くならない」「病院に行っても痛み止めと湿布の処方だけだからもう行かない」となかば諦めつつ、テレビCMなどで見た「膝の痛みに効くサプリメント」を飲んでいる人もけっこういらっしゃるのです。

©️Wakko/イメージマート

 また「娘から身体にいいからと言われてサプリメントが送られてきたのだけれど、今飲んでいるお薬と併用しても良いものでしょうか」という質問をいただくことも、たびたびあります。離れて住んでいる娘さんからすれば、なにか親にできることはないかと考え、サプリメントを贈ろうと思いつくのは、ごく自然なことかもしれません。

 しかしこのサプリメント、医師の立場からすると積極的におすすめするとは言えません。むしろ私は、なるべく使わないようにとお話ししています。理由は、効果が不定であるばかりでなく、かえって害となることもあり得るからです。

サプリメントはあくまでも食品であって薬剤ではない

 テレビCMに出演している俳優さんが謳っているように、「膝の痛みに効くサプリメント」を服用することで劇的に階段の昇り降りが楽になるというのが、真実であったとしましょう。しかし、それをもってこのサプリメントが有効であるということにはなりません。あくまでそれは、その俳優さんの「個人の感想」に過ぎないからです。

 もしこのサプリメントを使用した人が、使用していない人と比較して医学的な根拠をもって症状に改善がみられたというデータがあれば、それは整形外科で処方されるどんな薬よりも効くということになりますから、医薬品として認可されて保険診療で処方できるものとなるはずです。

 現実には、そのようなサプリメントはありません。見た目は錠剤やカプセルですから薬のように見えますが、あくまでも「食品」であって有効性が確認された薬剤ではないのです。まずここをしっかりと確認しておいてください。