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なぜ「紅麹サプリ」で死亡例が起きたのか? 健康に良いとされる「機能性表示食品」の制度的な欠陥

source : 提携メディア

genre : ニュース, ヘルス, 社会, 企業

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2018年からサプリメントとして20万食以上提供してきたことや、2007年からサプリメントの原料として販売をはじめ、2020年6月までに約17.5トン(=約1.75億食分)を国内外に流通させてきたが健康被害は報告されていない、としています。

これはおかしい。サプリメントとして販売されている場合、健康被害などの情報はまずは企業に入るのが普通です。健康被害が報告されていない、という主張に客観性がありません。

トクホだったら到底認められない内容だった

さすがにこれではエビデンスとして不足していると同社も考えたのか、安全性評価シートには、マウスに大量に投与した急性経口毒性試験や、ラット90日間反復投与毒性試験、遺伝毒性を調べた試験、ヒトでの臨床試験の結果が記載されていました。

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しかし、これらの試験に用いた動物の数や、投与する量の設定などは、OECD(経済協力開発機関)が定めたテストガイドラインから大きく逸脱しており、信頼度の低い試験でした。ヒト試験も行われていますが、被験者数は少なく参考程度にしかなりません。

結局のところ、もし同じデータがトクホや農薬・食品添加物等の審査に出されていたら、安全だとは到底認められないような内容しか、提示されていませんでした。

ちなみに、海外にもこうした機能性表示の制度があります。米国の「ダイエタリーサプリメント」制度は緩くてサプリメント天国になっている、とよく言われますが、安全性については実は、日本よりもかなり厳しい制度になっています。1994年10月15日以前に使用歴がない新規食品成分(new dietary ingredient:NDI)についてはとくに厳しいのです。

日本の安全性チェックは著しく不足している

食品医薬品局(FDA)の文書は、少なくとも25年にわたって広く安全に食べられてきた、ということを「食経験」としています。さらに、安全な食経験があったとしても、摂取頻度や期間、摂取量が多くなったりする場合については、動物への90日間投与試験や生殖・発達毒性、1年間慢性毒性または2年間発がん性、体内動態などを調べる試験の実施が求められています。当然、OECDのテストガイドラインに沿うように推奨されています。