EUも、1997年5月15日より前に、EU域内で食経験がない食品を新規食品(Novel Food)とみなして、認可制度としています。食べられてきたものでも、抽出や濃縮などが行われている場合は新規食品とみなされ、審査が必要。EU域外で食べられてきた食品については、少なくとも25年の食経験を求めています。
いずれにせよ、欧米ではサプリメントとしての販売歴など、食経験としては認められません。
日本はそもそも、機能性表示食品に限らず一般の新規食品についても、国の審査がなく、安全性の確認や販売の開始が企業の自主的な判断に任されています。人々が食べ始めてもし問題が生じれば、食品衛生法違反に問う、という事後処理型の食品衛生行政です。
新規性が問われ、機能性を追求し、摂取量が多くなりがちな健康食品である「機能性表示食品制度」においても、欧米に比べて安全性の確認は著しく不足していたのです。
消費者が「安全」と錯覚してしまう理由
また、製造における品質管理の規定も、トクホに比べて弱いと言えます。トクホにおいて原材料や製品の規格、製造方法の変更などを行う場合、その理由や変更しても製品の同一性を失わないとする科学的な根拠などを届け出なければなりません。一方、機能性表示食品のガイドラインでは、生産工程・品質管理の変更について、そのような細かい規定はありません。
医薬品の場合には、原材料や製品の規格、製造方法など変更したい場合には厚生労働省に申請して承認を受けなければ変更できないのです。
安全性や機能性の担保は、製品の品質管理と品質保証が適正に行われているのが大前提です。機能性表示食品は、その点も著しく緩かったのに、錠剤やカプセルなどの形状や国の制度に則った製品であることなどから、消費者が大丈夫と錯覚していたのではないでしょうか。
健康被害の公表と国への報告が遅すぎる
それにしても、小林製薬に最初の症例報告があったのが1月11日であり、2月1日までに計5例の症例の情報が寄せられた、と同社が記者会見で説明しています。それから3月15日までに合わせて13人の報告があり3月22日にやっと発表し消費者庁へも報告。あまりにも遅すぎるのではないでしょうか。