機能性表示食品の弱点はわかっていたが…
機能性表示食品について私は、制度がはじまった2015年からしばらく、「制度に問題あり」として記事を執筆したり、消費者団体の一員として疑義情報を消費者庁に出したりしていました。とくに、食経験として健康食品の販売実績が用いられていることや、安全性・機能性を確保するには製品の品質管理や品質保証が大前提なのに、その点が著しく弱いことを問題視していました。今でも、ウェブサイトで読める記事もあります。
食品分析開発センターSunatec・機能性表示食品、消費者はどう見るか⁈(2016年、松永和紀執筆)
その後、大量の機能性表示食品が届け出され一つずつの精査ができなくなったことや、個人的に忙しくなったことなどにより、機能性表示食品ウォッチングをやめてしまいました。
当時心配していたことが、もしかすると今、事件となり大量の健康被害につながっているのではないか。そう思えてならず、個人的にも悔いが残ります。
※記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます。
〈参考文献〉
小林製薬
消費者庁・紅麹を含む健康食品関係について
厚生労働省・「いわゆる健康食品」による健康被害事例
内閣府食品安全委員会・欧州連合(EU)、モナスクスの紅麹由来の食品サプリメント中のかび毒シトリニンの基準値の改正を公表
消費者庁・機能性表示食品について
内閣府食品安全委員会・「健康食品」に関する情報
消費者庁・特定保健用食品について
米食品医薬品局(FDA)・Draft Guidance for Industry: New Dietary Ingredient Notifications and Related Issues
科学ジャーナリスト
京都大学大学院農学研究科修士課程修了。毎日新聞社の記者を経て独立。食品の安全性や環境影響等を主な専門領域として、執筆や講演活動などを続けている。主な著書は『ゲノム編集食品が変える食の未来』(ウェッジ)、『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書、科学ジャーナリスト賞受賞)など。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。