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「麹菌」と「紅麹菌」はまったくの別物

まず、明確にしておかなければならないこと。紅麹菌は、多くの人がイメージする「麹菌」とは、生物としての「種」が異なります。日本の国菌とも呼ばれる麹菌は、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)。黄麹とも呼ばれ、安全性を示す各種のデータがあります。一方、小林製薬が紅麹菌としているのはMonascus pilosusです。

報道されているニュースやSNSなどの中には、紅麹菌を麹菌の一種と紹介したり、紅麹菌を語るにあたって、発がん物質を産生する他のAspergillus属菌の例を引用したりするものがあります。また、紅麹にもさまざまあり、今回問題になっているのは、小林製薬が使用していた菌株です。こうしたことが混同されると風評被害につながりかねないので、区別ははっきりしておきたいところです。

カビ毒シトリニンは検出されなかった

今回、健康被害が懸念される小林製薬の5製品には、精米を紅麹菌(Monascus pilosus)で発酵させ滅菌乾燥させた食品が原材料として使用されていました。機能性関与成分は「米紅麹ポリケチド」とされていますが、物質名としてはモナコリンK。LDL(悪玉)コレステロールを下げる、とうたいます。1日摂取目安量あたりの米紅麹ポリケチド含有量は、2mgです。

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紅麹菌の中には、カビ毒シトリニンを生成する菌株があり、EUは紅麹サプリメント中のシトリニンについて、100μg/kgという基準値を設定しています。しかし、同社は製品に使用する紅麹の菌株については「シトリニン産生遺伝子が機能しておらずシトリニンを産生しないため安全」と従来から説明していました。また、問題になったロットにおいても、シトリニンが不検出であることを確認しています。

そのため科学的には、製造中になんらかの原因でほかの物質が混入したり、別のカビが混入増殖する、というようなケースのほか、紅麹菌自体の性質が変わり、なんらかの物質を生成した可能性が考えられます。