ベストパフォーマンスを発揮することを第1に
かつての石川は「チームとしてどう戦うか」よりもまず「自分のパフォーマンスがいかに発揮できるか」を優先した。試合中も、自分が欲しい時に望むトスがあがって来なければタイムアウト時やコートの中で床を叩いて怒りや不満を露わにし、上級生であっても「トスをください」と迫ることもあった。
よく言えばプロ意識の高さゆえではあるが、我を通すあまりワガママにも見える。そんな振る舞いに変化が生じたのは、東京五輪で主将に就任してからだ。
ボールをつなぐバレーボールは、チームスポーツの中でも「和」を重んじる。その主将といえば、重圧もありながら献身的に振る舞うイメージが先行するが、むしろ「主将」という責務が、石川を解放した。
「あくまで僕の考えとして、チームの中心、象徴ともいうべき存在がキャプテンです。だから、キャプテンが責任を背負う。言うなればすごくシンプルだな、と。キャプテンになる前も、今も、自分のベストパフォーマンスを発揮することを第1と考えるのは変わりありません。でも自分がキャプテンになってからのほうが、責任の所在がハッキリできる分、人のせいにすることなく、矢印を自分に向けられる。そのほうが僕は楽だし、すごくやりやすくなりました」
パリ五輪での目標は、メダル獲得
試合前の入場時には、誰より早くコートに入り、選手を迎える。1人1人とハグをして円陣を組み、試合が始まれば、ここぞという場面で点を獲り、自らや周囲を鼓舞するべく、吼える。昨年のパリ五輪予選最終戦でも同じだった。その理由を、石川はこう語った。
「今日戦っていたメンバーの中には、吼えて流れを持ってくるキャラクターがいなかったので、そこは僕が入って、雰囲気を少しでも持ってこようかな、と。意識して、吼えました」
勝つために何をすべきか。自身のパフォーマンスを引き出すべく発するエネルギーが、周囲をも引き上げる。石川に続いて海外へ渡り、日本代表の中心選手へと成長した髙橋藍や西田有志といった若い選手たちの存在は、まさにその証明でもある。
強き主将がいる日本代表のパリ五輪での目標は、メダル獲得。ミュンヘン以来52年ぶりの金メダルも、決して夢ではない。