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「めちゃくちゃ分かる。その表現!」プロバレーボール選手・柳田将洋が高校時代の悩みや怪我、すべてを乗り越えて、31歳のいま考えていること

「めちゃくちゃ分かる。その表現!」プロバレーボール選手・柳田将洋が高校時代の悩みや怪我、すべてを乗り越えて、31歳のいま考えていること

柳田将洋×坪田侑也『八秒で跳べ』対談

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 高校のバレーボール部を舞台にした青春小説『八秒で跳べ』を上梓した、作家の坪田侑也さん。中学時代からバレーをはじめ、現在も慶應義塾大学医学部体育会でバレーを続けている。そんな坪田さんが、長年尊敬し続けてきたプロバレー選手、元日本代表主将の柳田将洋さんを訪ねた――。

作家の坪田侑也さん(左)とプロバレーボール選手の柳田将洋さん

◆◆◆

医学部に通いながら小説を書き上げて

坪田 柳田選手は慶應義塾大学の先輩で、僕の中では中学でバレーをはじめた時から、ずっと大きな存在でした。対談の機会をいただいて本当に緊張しています。

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柳田 坪田さんは医学部に通いながら、小説を書いていらっしゃるということで、いったい、どういう時間の管理をされているのか――大学でもバレー一色だった僕からすると、めっちゃ気になっています(笑)。

 

坪田 授業自体がそんなにあるわけではないので、週に3回くらいはキャンパスに通って、原稿を書いて、週に2回くらい夜は近所の小学校の体育館でバレーをして、みたいな生活です。

柳田 ぼくはSFC藤沢キャンパスでしたけど、医学部はどこに?

坪田 慶應病院の隣りで信濃町です。三田や日吉はすごく広いけど、信濃町はビル二つあるくらいで狭いし、もちろん体育館もありません。医学部の部活は今しか出来ないことだからか、どこの大学でも結構盛んで、地方の医学部では自前の体育館があるばかりか、寮に入っているんで、授業が終わったら寝る時間までバレーをしているチームもあります。そんな人たちには絶対に勝てない(笑)。執筆については、常にがんばりたい気持ちはあるんですが、詰まってしまうこともよくあるし、意識していてもさぼっちゃったりもします。

 

柳田 それでも十分にすごいです。僕は休むなら完全に頭も身体も休む、という感じのタイプなので。

坪田 オフの日って、どんな感じなのですか。

柳田 リーグ中だったら月曜日がオフで、火曜日から木曜日が練習、週末が試合というパターンになりますが、僕は月曜日はバレーのことは、基本は考えないようにしています。たぶん年齢を重ねてくると、バレーよりもリフレッシュを心掛けている人が多いような気がしますね。僕も若い頃、日本代表に入って2年目くらいの時は、休みの日も海外チームの動画を見たり、監督がこう言った、ああ言ったなんてずっと考えていたんですけど、結局、根を詰めすぎても、どこかでパンクしてしまう瞬間があることに気付きました。

 

坪田 割と意識的に休まれているんですね。具体的なオフの過ごし方というのは?

柳田 バレーは館内競技で外に出る機会がないから、どうしても出かけたくなるんですよ。車を運転するのも好きですし、リフレッシュのためには外出することも多いですね。本を読んだりすることもあって、今回も『八秒で跳べ』を読ませていただいています。まだ途中なんですけど、中学時代から万年補欠だった北村君が、主人公の景からレギュラーを奪って、佳境に差し掛かったところです。「おい景、大丈夫か!?」みたいな気持ちで、早く続きが読みたい(笑)。

 

坪田 ここからさらに物語が展開するはずです。

柳田 そこは「おい、景ちょっと無理するな。怪我が再発するぞ」みたいな感じかな(笑)。最初のページを開いた時に、主人公の怪我の描写から入るんですが、あそこはリアルですね。僕も捻挫をした経験があるから、「めちくちゃ分かる。その表現!」と思いました。

坪田 僕も同じ怪我を高校時代にしたことがあって、それをそのまま書こうと考えて書きました。リアルに読んでいただいて嬉しいです。

『八秒で跳べ』(坪田侑也 著)文藝春秋

柳田 怪我した場面をフラッシュバックすることは僕もあって、そのことを思い出したりもしました。最近では、漫画『ハイキュー!!』が大人気ですけど、バレーボールというものを活字で読める機会が、これまではあまりなくて、こういう共感を覚えるコンテンツがあるんだと嬉しくなりました。