「強い……」

 開幕から1カ月の間に、スコアブックをつけながら、一体何度そう呟いたことだろう。24試合19勝5敗、159得点、チーム打率.293。今年の西武は、本当に強い!

 その理由を選手やコーチングスタッフ、メディア仲間など、いろいろな人に尋ねてみた。だが、返ってくる答えは、「わからないんだよねー」「やってることは去年までと何も変わっていないのに」と、見事なまでの歯車の噛み合いを不思議がる声が圧倒的に多い。とあるコーチからは、「こっちが聞きたいぐらいだよ。逆に、何でこんなに勝ててると思う?」と、ジョークを交えつつ、逆質問をしていただくこともあった。ある意味、それぐらい、チームに浮き足立った様子や慢心はなく、現場の雰囲気は、はっきり言って「最高」なのだ。

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 その中で、早くも15試合で2桁安打を記録する猛打線の要因を明らかにしてくれたのが、他でもない、指揮官の辻発彦監督だ。「全部、選手のおかげだよ〜」と、目尻を下げながらも、冷静に、かつ野球人としてシビアに分析する。

辻監督が選手の成長を感じたシーン

「選手たちの技術が上がったんだと思う。それと、試合を本当に考えながら打席に立っている」

 その典型例として挙げたのが、4月28日の楽天戦での浅村栄斗選手のバッティングだった。4打数4安打の活躍を見せた中、7回裏の第四打席目、走者一、三塁で迎えると、センター・バックスクリーンへ本塁打を放った。「あそこは絶対に内野ゴロでゲッツーだけはダメな場面。その上で、外野フライでもOKという打ち方からのセンターへのホームランだった。あの浅村のバッティングには惚れ惚れとする。見事に手本になるようなバッティングだった」と、最大級の賛辞を送る。

28日の楽天戦、7回裏に3ランを放った浅村栄斗

 さらに、「四球を選んだり、『やめろ』と言ってるのにヘッドスライティングをしたりと(笑)、とにかく“うしろにつなぐ”という意識が選手たちの中に自然と生まれている」ことが非常に大きいと力説する。

「やはり、なかなか3連打、4連打で点は取れない。四球を選んだりということが大量得点という結果として出ている。『次に回せば、うしろがなんとかしてくれる』という、チームの総力の部分での自信がすごく増したと思う。で、みんなが活躍する。誰かが日替わりで活躍して、それをみんなで喜ぶ。例え、ずっと打ってなくても、1本ヒットが出ただけでバカみたい喜ぶ。そういう気持ちの切り替えができてるから、1つのミスぐらいでそんなにバタバタもしないしね」

 この指揮官の言葉を、選手視点から山川穂高選手が語る。

「味方のヒット1本、四球1つに対してベンチ全員が盛り上がるのは、勝ちたいからですよね。僕たちプロ野球選手は基本、勝負ごとには負けたくないものです。どんな打席であれ、試合であれ、勝負に負けたくない。それはチームの勝利に対しても同じです。だから、味方が打って、相手を負かせたら嬉しいですし、とにかく『勝ちたい』という思いが今年はめちゃくちゃ強いです」

 その勝負への強いこだわりは、やはり、昨季の悔しさがベースにあるからだという。「CSで負けたこともですし、リーグ戦も結局2位。1位以外は全部一緒。『優勝以外は全く意味がない』と、僕は考えています。だから今、チームは1位にいますが、この位置を譲る気はないですし、僕自身の成績(本塁打、打点)も1位を譲る気はないです!」。

「勝負に絶対勝つ」。
「1位の座を譲らない」。

 この言葉こそ、今季チームが、ただ強いだけではなく、「圧倒的に強い」ことを象徴しているように思う。