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1・政治とカネ──党ガバナンスの強化

 政治資金規正法は、政治資金収支の公開を通して政治活動の公明公正を確保し、民主政治の健全な発展に寄与することを目的としている。今回のような「政治とカネ」の問題が二度と起こらぬよう再発防止を徹底し、加えて政治資金の透明性を一層向上させなければならない。

大野敬太郎氏 ©文藝春秋

 6月19日に成立した改正政治資金規正法は、再発防止策として、資金の通帳記入の義務化や外部監査の強化とともに、政治資金収支報告書提出に対する議員の監督責任と罰則が新設されるなど、不記載・虚偽記入に対する一定の抑止力を持つものとなった。一方で、政策活動費の支出をチェックする第三者機関の制度設計や、10年後に公開が義務付けられた領収書の対象範囲など、透明性の向上に資する部分は、有識者の間でも意見が分かれ、その大半が「検討」事項として残された。2年後の2026年1月の施行に向け、十分な議論を重ね、実効的な制度の創設が急がれる。

 政党は国家の機関ではなく、国民の自発的結社であり、政治活動の国家からの自由は最大限守られるべきである。ただし重要なのは、自由には責任が伴うという大原則を守ることだ。自民党は、その責任を全うできる組織、自浄作用が働く組織に生まれ変わらなければならない。

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 最初に着手すべきは、問題対応プロセスの確立だ。組織内部に不祥事が生じた場合、一般に、「現状報告」「対処方針説明」「原因究明」「責任表明」「再発防止」のプロセスがとられる。特に「原因究明」は極めて重要で、誰が、いつ、何を、どのように指揮したのかを解明することは「責任表明」の必要条件であり、どの制度に、何の不備があり、事態の発生を許したのかを分析することは「再発防止」の必要条件だ。

小倉將信氏 ©文藝春秋

 ところが、今回の党の対応を振り返ると、個々の議員のさまざまな努力にもかかわらず、結果としていずれの段階でもミッシング・ピース(欠落部分)が多過ぎた。党の調査チームの「聴き取り調査に関する報告書」(2024年2月15日)に、「遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い」と記されるのみで、実態は不明のままだ。清和研では、会長の安倍晋三元首相が、亡くなる直前の2022年4月に還流中止を指示したにもかかわらず、死後に再開されていた。この再開の経緯もいまだ不明のままである。検察の捜査でも実態が明らかにならず公判に持ち越されたことで、当然の帰結として政治不信を深めた。

 そこで我々は、危機における党運営の時代遅れともいえる実態を正すべく、抜本的な近代化を提言する。すなわち、内部不祥事に厳正に対処する体制の構築だ。「現状報告」「対処方針説明」「原因究明」「責任表明」「再発防止」という、危機管理の基本的フローを叩き台に、各ステップにおいて為すべき事柄について、必要な制度を整備し、基本指針を策定すべきだ。その中核は、不祥事を起こした議員に対する党の調査権限とその範囲を明記することで、抑止力とすることだ。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「私たちの「自民党改革試案」」)。

 

全文では、さらに下記の内容について言及されています。

 ▶政策集団は「政治技術」も伝承せよ
 ▶「73歳定年制」の厳格な適用を
 ▶「クオータ制」導入で女性議員を増やせ
 ▶「政調会」は官民連携で長期的な政策立案を