「私、20年以上前に子供4人を産んだんですが、バケツにコンクリ詰めして家に置いてあるんです」
逮捕された女はなぜ20年以上前の犯行を告白しだしたのか…? 2017年に発覚した、乳児4人をコンクリ詰めして20年以上も押し入れに隠していた驚きの事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 女の性犯罪事件簿』(鉄人社)より一部抜粋してお届け。なお本書の登場人物はすべて仮名であり、情報は初出誌掲載当時のものである。(全2回の1回目/後編を読む)
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「子供4人をコンクリ詰め」――ある女の告白
「あの…、すみません」
「何でしょうか?」
「私、20年以上前に子供4人を産んだんですが、バケツにコンクリ詰めして家に置いてあるんです」
「何だって?」
こんなことを言って、五十路女が唐突に交番を訪ねてきたのは事件当日の朝だった。
警察官が女の家を確認に行くと、押し入れから4つの段ボール箱が見つかった。そのうちの1つを開けたところ、灰色のポリバケツが見えた。付属のふたで密封され、その上から粘着テープで厳重に巻かれていた。
「これは…?」
「20年ぐらい前に一緒に住んでいた男性との間にできた子供です」
「なぜ20年も経ってから急に自首したのか?」
「それが…、なぜか今日、急に思い立ったんです」
警察はAi(死亡時画像診断)と呼ばれる技術で中身を調べ、「人骨で間違いない」との結論を得て、死体遺棄容疑で逮捕状を取った。
女の話が本当なら、死体遺棄罪の時効(3年)はとっくに成立している。だが、女は2年半前に現場のマンションに転居しており、その際に遺体の入ったバケツを搬入した行為が“新たな遺棄行為”を構成すると判断された。こうして逮捕されたのがパート従業員の宮崎由美子(53)である。由美子は20年以上も抱え込んできた自分自身の“秘密”について語り始めた。
由美子は中卒後、1回の婚姻歴があったが、バツイチとなり、地元の葬儀会社で働き始めた。そこで知り合ったのが子供たちの父親でもあるA氏だった。A氏は20歳以上も年上だったが、同棲して一緒に暮らし始めた。
「それで、なぜA氏と再婚しなかったんだ?」
「当時は金銭的にも困ってて…。生活保護を打ち切られたくなかったので、籍は入れませんでした」
由美子は「生活が苦しい」と言いながら、極度のパチンコ狂で、A氏と同棲してからも常に家計は火の車だった。それなのに家族計画は無視しており、避妊は全くしなかった。
最初に妊娠に気付いたのは、同棲して間もない27歳のときだった。もともと太り気味だった由美子はA氏にも気付かれることなく隠し通し、自宅で男児を出産した。
「金銭的にも育てる余裕はない」と思った由美子は、赤ん坊をタオルに包んでビニール袋に入れ、数珠と防腐剤も同梱してバケツに寝かせ、その上からコンクリートを流し込んだ。