約580億円の仮想通貨(暗号資産)不正流出からまもなく7年。あのコインチェックが12月11日、米ナスダック市場に上場を果たした。その裏には……。
◆◆◆
紆余曲折を経ての上場
正確に言えば、上場したのは、ネット証券大手「マネックスグループ」の子会社で、オランダに本社を置く「コインチェックグループ」。時価総額は日本円で約2700億円に達した。
「上場式典後、マネックス創業者の松本大会長(61)は『人材の獲得やほかの会社の買収を進めていきたい』とコインチェック株を対価に、日米などで仮想通貨関連事業者を積極的に買収する意向を示しました。上場後もマネックスが株式の8割を保有し、松本氏がエグゼクティブチェアマンを務めます」(経済部記者)
だが、上場への道のりは紆余曲折だった。マネックスが、冒頭の仮想通貨不正流出(2018年1月)で経営危機に瀕したコインチェックを36億円で買収したのは、18年4月。仮想通貨バブルの波に乗り、同社は21年3月期には138億円もの利益を計上した。
「マネックスは22年3月にSPAC(特別買収目的会社)を利用し、コインチェックの米ナスダックへの上場を目指すと発表。日本では認められていませんが、SPAC上場はスピーディーに資金調達できるメリットがありました」(同前)
バブルの崩壊で、業績悪化もみられたが…
ところが、バラ色のシナリオは直後の仮想通貨バブルの崩壊で一変する。22年11月には大手交換事業者FTXが破綻し、コインチェックの業績も悪化。そもそも仮想通貨に否定的なバイデン政権下では、SPACは“裏口上場”として、締め付けが厳しかった。
「潮目が変わったのは、今年11月のトランプ氏の大統領選勝利です。トランプ次期米大統領は12月4日、証券取引委員会の次期委員長に弁護士で狂信的な仮想通貨推進論者として知られるポール・アトキンス氏を指名。仮想通貨のテコ入れに積極的と見られています。ビットコインの価格は12月には初めて10万ドル(約1500万円)を突破しました」(市場関係者)