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米朝首脳会談、厳戒のセントーサ島に「週刊文春」記者が潜入!

新聞・テレビが報じない場外乱闘

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米国人記者たちから失笑が漏れた

 肝心の米朝首脳会談はどうだったのか。

 翌12日午前9時よりスタートした会談では、当初こそ、正恩氏の顔が緊張で紅潮し、キョロキョロと落ち着きのない様子が目立ったが、終わってみればトランプ氏が「今後も多く会うことになるだろう」と語るなど、友好ムードが演出された。

 トランプ氏は会談後にカペラで行われた会見で、正恩氏について「彼は才能のある人物だ」「北朝鮮は3、4カ月前とは違う国だ」とべた褒め。正恩氏を「若い」と言いかけた後、一瞬、「失言した」という表情になり、「北朝鮮の人々にとって素晴らしい」とも付け加えた。

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 シンガポール市内のF1ピットに設置された各国報道関係者が集まるメディアセンターでもこの様子は生中継された。トランプ氏が日本の安倍晋三首相について「アベはこの前、米国から日本に帰った。いい奴だ」とだけ触れた際には、その場にいた米国人記者たちから失笑が漏れていた。

プレスセンターの様子 ©文藝春秋

 今回の会談について、デイリーNKジャパンの高英起編集長はこう語る。

「例えは悪いですが、敵対していた巨大暴力団組織の親分と若い田舎ヤクザが、いざ個人的に会ってみるとお互い馬が合い、意気投合したようなもの。トランプ氏は、自分の子どもような年齢の正恩を可愛がっている節すらある。

『非核化』は正恩の本気度次第でしょう。もし本当に取り組んでも完了までには10年、15年かかります。今回は似たもの同士のリーダーがとりあえず『会った』というだけで、そもそも二人とも、問題の細かい内容までは分かっていないはず。あとは実務者任せです。金正恩は社会主義のこともよく知らないのです」

安倍首相は「グッドマン」?

 一方、この間、終始、暗い表情だったのが日本政府関係者だ。

 トランプ大統領が滞在するシャングリラ・ホテルには、谷内正太郎・国家安全保障局長と外務省の金杉憲治・アジア大洋州局長の姿があった。

「米朝会談後の日米電話首脳会談に備え、安倍首相がトランプ氏のお目付け役として派遣した。だが元々、日本は米朝関係に関しての情報収集に苦戦していることもあってか、谷内氏らは記者らの問いかけにも『第三国の立場から話せることはない』と、言葉少なでした」(大手紙記者)

©文藝春秋

 会談で日本の拉致問題はトランプ氏側から問題提起こそされたが、合意文書すら盛り込まれていない。

 トランプ氏は安倍首相と韓国の文在寅大統領を「グッドマン(いい奴)」と形容し、今後のプロセスついては「日本と韓国が手伝ってくれるだろう」と語っている。

“親分”同士が大枠だけ話をして、面倒なカネや実務のツケが日本や韓国に回ってくることにはならないか。

(取材:齋藤史朗)

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