30歳まで無職だった経歴をもつ、WEBメディア『オモコロ』の人気ライター・ディレクターのマンスーンさん。大学卒業後、周りの友人が次々と就職していく中、彼はなぜ無職になり、何を感じながら日々を過ごしていたのか。
当時の赤裸々な暮らしぶりと、ライターになるまでの道のりを書いたエッセイ『無職、川、ブックオフ』より一部抜粋して紹介します。(全3回の1回目/続きを読む)
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不毛な日々を「マインクラフト」が救ってくれた
いつも同じ朝。というか夜。明るくなったら寝ていた。暗くなったら起きていた。
居住地。実家。キッチンの食べ物。無料。暖かい毛布。無料。全てを洗い流せるお風呂。無料。自分を保つインターネット。無料。それ以外は全て有料。家から一歩でも出れば。本当に。
無職になって数年。やる気ゼロ。お金ゼロ。カロリーゼロ。ではない。ローソンストア100で買ってきたサッポロポテトを毎日のように食べていた。サッポロポテトには2種類あるが、僕は細くカットされた形にカラフルな点々が彩られた「つぶつぶベジタブル」の方が好きだった。
もちろん美味しいから好きという理由もあるが、それよりも、サッポロポテトは他のスナック菓子に比べて量が多いから好きだった。終わらないお菓子。しかもベジタブルなんて名前が入ってるから罪悪感もない。食べても食べても。食べなくても食べてもなくならない。そんな菓子を探してる。
そんな僕にできること。それはマインクラフトの整地だけだった。インターネットがきっかけで知り合った友達数人と流行ってるという理由だけで始めたマインクラフト。同じサーバーで毎日夜に集まり、Skypeでグループ通話をしながら資材を集めて建物を建てたり、ダンジョン攻略を目指したりした。家にいてもブロックで作られた世界だけは無限に広がっていたのだった。
すっかりマインクラフトにのめり込んだ僕は、毎日のようにブロックの木を切り、ブロックの土を削り、ブロックの岩を壊していた。実家住まいの僕でもマインクラフトのなかでは一家の主として3階建ての大きなログハウスに住んでいる。
