完全なる「もうひとつの世界」
360度どちらを向いても波が押し寄せる部屋があったり、無数のランプに囲まれてしまう空間や、見渡す限りの棚田に身を置いた感覚が味わえるスペースも。
長い階段を見つけたので上ってみると、そこにはプロジェクションで映し出された宇宙空間の中でトランポリンができたり、光の中でボルダリングを楽しめたりと、身体を目いっぱい動かして遊べる一帯が広がっていた。
これは外界とかけ離れた、完全なる「もうひとつの世界」だ。みずからミュージアムと名乗ってはいるものの、ここが何なのかと訊かれたら、遊園地、科学館、美術館、アスレチックフィールド、美しい景観の観光地、それらすべての要素を含む新しい遊び場であるとでも答えるしかない。
遊びを真正面からアートのテーマに
壮大な遊び場であること。ああ、これが新しいアートの基準なのかもしれない。会場で光の渦に身を浸していると、そんな思いも頭をよぎる。
「遊びをせんとや生まれけむ」
という古来の言葉があるように、そもそも人の「生」は、食や性といった生きていくための本能的営みと、遊びの要素、概ねこのふたつでできているように思える。生きていくとはもっと複雑なことにも感じられるけれど、いやもっとシンプルに考えたっていいのでは。
アートは人の「生」を何とか丸ごと表現しようと、長年にわたりもがいてきた。これまではどちらかといえば、生命をつなぐ営みのほうに多く目を向け、テーマに据えてきたのだろう。
だが、世もすでに21世紀。チームラボが先陣を切って、遊びを真正面からアートのテーマに据えたのだ。アートにおける大きな潮目の変化を、いち早く感じられる場。それがこのミュージアムだといっていい。
ふだん私たちが過ごしているのとはまったく異なるリズムとハーモニーが支配する空間で、時間を忘れて、遊ぶことに没頭してみよう。