「急展開の募集停止だったようです。大学職員は4月に入ってからも人文学部の新設に向けて動いていたと聞きました」
声を落としてそう語るのは、大学入試・教育調査を行うアロー教育総合研究所所長の田嶋裕氏だ。その大学とは京都ノートルダム女子大学。もともと京都女子、同志社女子とならんで京都三女子大と称された伝統校だ。2026年度からの人文学部開設を発表していたが、4月下旬に26年度からの学生募集停止が発表された。
「社会の風潮から今は女子大をあえて選ぶメリットがなくなっています。名門女子大も安泰とは言えません」(大学入試アナリストの石原氏)
京都ノートルダム女子大に続く危ない女子大は?
では、ノートルダムに続く危ない女子大学はどこなのか。東名阪三大都市圏の名門女子大25校を対象に、生き残りの余地を検証した。「週刊文春」は入試情報の精査と複数の識者への取材によってリストを作成。識者の評価は、生き残りの余地を「A=安泰」から「C-=苦境」までの5段階でつけてもらった。
大学の現状を測る上で重視した指標が3つある。まず「一般選抜の志願者数」だ。大学入学共通テストの導入で一般選抜の志願者が大幅減だった21年度と比べても、大きく減少している大学は今の学生のニーズにあっていないと言える。
次に「収容定員充足率」。この割合は9割未満から段階的に私学助成金が減額されていく。また、学生数が収容定員の5割以下の学部がある大学には、文部科学省が学部新設を認めていない。しかも今後は7割以下で不可となる方針だ。つまり、大学の将来性を左右する数字なのだ。
「京都ノートルダムの充足率は61%でギリギリでした。基準を割れば、『学部新設で起死回生』という手も打てなくなる」(田嶋氏)
3つ目が「一般選抜比率」。年明けに行われる一般選抜での入学者は今や少数派。現在、入学者の過半数は「年内入試」と呼ばれる、総合型選抜や公募制推薦、指定校推薦、内部進学など12月までに合格が決まる入試での進学者なのだ。
東女は唯一「B+」評価に
一般選抜での入学者が相対的に多いのは、国公立や難易度が上位の私大だ。下位大学は年内入試でできるだけ定員を埋めようとする傾向がある。石原氏が「一般選抜で他大学と競合しながら受けてもらえる大学は余裕がある」と言えば、田嶋氏も「18歳人口が減少し、上位大学も入りやすくなっていく。指定校推薦でたくさん取っているような大学は、近い将来危ない大学と言えます」と口を揃える。
お茶の水女子などリストで「A」評価となった8大学は、いずれも定員を充足している。国立の奈良女子は、22年の工学部新設にも後押しされ、志願者を増やした。首都圏の「御三家」津田塾、日本女子(本女)、東京女子(東女)はやや序列の差がついた格好だ。
いずれも戦前からある名門大学だが、津田塾は5年間で3.4%減、本女は1.7%減と志願者数がほぼ横ばいで奮闘。御三家で唯一付属校があり、内部進学者も多い。一方で東女は24.2%減と大幅な落ち込み。御三家の中で唯一「B+」となっており、「一人負け」の状況だ。
「本女は7つの学部を有し、理学部や建築デザイン学部と理系も充実。目白のワンキャンパスで通学も便利です。一方、東女は現代教養学部の1つのみ。その中の専攻は構成がぱっとしない。リベラルアーツ系が中心で外部から分かりにくい学部学科構成にしてしまったのが失敗です」(石原氏)
では他の名門大学はどのような評価を受けているのか。
現在配信中の「週刊文春 電子版」では白百合、フェリス、東洋英和、聖心、昭和、実践、共立、大妻や関西御三家の京都女子、同志社女子、神戸女学院など名門女子大の現状を調査した「危ない名門女子大リスト」を公開している。


