近年の香港映画では異例といえる興行収入5億円を突破し、今年1月17日の日本公開から、現在もロングランヒット中の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(原題『九龍城寨之圍城』)。「東洋の魔窟」として知られる1980年代半ばの巨大スラム街・九龍城砦を舞台に、男たちの熱い絆と壮絶な戦いを描いた本作に魅せられたのは、従来の香港・アクション映画ファンだけではなかった……。

 本作の日本上映権を買い付け後、宣伝プロデューサーとして、さまざまな戦略を仕掛けてきた映画配給会社クロックワークスの小栁大和さん、これまで編集やパブリシストとしてアジア映画に関わってきた大島美樹さん。オフィシャルライターとして執筆・取材し、来日舞台挨拶のMCも担当した映画評論家のくれい響さんが、貴重な裏話とともに、この一大ムーブメントを振り返りました。『週刊文春WOMAN2025夏号』より、一部を編集の上ご紹介します。

©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved. 配給:クロックワークス

「香港映画の新星が現れた!」

くれい 2024年10月末に開催した「東京国際映画祭」では王九役のフィリップ・ン(伍允龍)さん、11月の「香港映画祭」の上映では信一役のテレンス・ラウ(劉俊謙)さんとフィリップ・ンさんが来日。まったく正反対な性格ながら、とても気さくな方でした。

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大島 映画祭の招聘でお越しいただいたお二人でしたが、香港映画祭のゲストとして来日したテレンスさんは『トワイライト・ウォリアーズ』『スタントマン 武替道』『贖罪の悪夢』と、3作の出演作が上映され、「香港映画の新星が現れた!」という印象でした。

昨年の香港映画祭で。(左より)谷垣健治(アクション監督)、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、アンガス・チャン(プロデューサー) 提供:香港映画祭2024 Making Waves

 そういえば、劇場から取材場所に移動するとき、小雨が降っていたんです。そこでテレンスさんにビニール傘をお渡しし、私は急ぎそのまま歩いていたら、テレンスさんが傘を差し掛けてくださったんです! 恐縮して「不要です」と伝えたら、彼が英語で「この傘は大きいから大丈夫」と笑顔でサラッと仰って。ほんの数秒の“相合傘”でしたが、テレンスさんの紳士的な振る舞いに感動しました。

小栁 お二人とも滞在期間が短く、お疲れもあったと思うのですが、お客さん一人一人にサインし、写真を撮り、海外のスターとは思えないほどのファンサービスをしてくださいました。

サインをするテレンス・ラウ 提供:香港映画祭2024 Making Waves