蓋を開けてみれば、政治刷新を期待した市民の圧倒的な支持を受けて、あの男が8076票で当選した。竹本は5344票だった。その経緯をつぶさに見ていた南澤は思った。

「市民は政治の変化を望んでいる。自分もいまのままではダメだと思う。市政の変化のためには議会も変えないと」

 南澤は同年11月の市議選に立候補し、見事トップ当選を果たす。あの男が振りまいた「若さとさわやかなイメージ」に共鳴する者からの期待票だった。その印象が強いこともあり、南澤はあの男のシンパだと市民から認識されている。

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安芸高田市市長時代の石丸伸二(2024年3月25日) ©時事通信社

居眠り糾弾と「恫喝発言」問題

 その一方で、新しい市長と議会がすでに対立しつつあった。最初の狼煙が上がったのは、9月25日に行われた定例議会だった。あの男は市民も議員も全く予期しない手法で、議会の「弛み」を訴えた。同日、Twitterにこう投稿したのだ。

〈本日午前、議会の一般質問が行われている中、いびきをかいて、ゆうに30分居眠りをする議員が1名〉

※本記事の全文(約1万字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(神山典士「『あの男』が去ったあとに――2025年春、広島県安芸高田市ルポ」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

・「市報」を私物化して特定の議員を攻撃
・四方八方からカメラに狙われる
・新市長を助けるために市議になってはみたものの
・2期目に出ないと知って

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