「太ってるからサボったんでしょ」――担任の先生からの何気ない一言が原因で、小学生のときの不登校・引きこもりになってしまったヒィロさんだが、伝説のビジュアル系バンド「Janne Da Arc(ジャンヌダルク)」と出会うことで見事、社会復帰。
その後、自身も音楽活動を始め、ついには30歳を前にしてメジャーデビュー。オリコンチャートインも果たす。しかし、それでも幸せになれなかった彼のインタビューのダイジェスト版をお届けする。
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4年間の引きこもり生活を経て高校に通い始めたヒィロさん。当初は電車に乗るだけで吐き気に襲われ、閉所恐怖症と闘いながらの通学だった。「空いている電車のほうが気分がマシだったので、反対方面の始発駅から乗るようにしました。通常の倍以上の通学時間がかかりましたが、僕が選んだ道なのだから行けないとは言えません」と当時を振り返る。
高校では様々な事情を抱えた生徒が集まっていたため、オタクで暗い自分も肩身の狭い思いをすることはなかったという。1年生の時に3人の親友ができたことが大きな転機となり、人と交わることに慣れていった。しかし、不登校だった過去については、くだらないプライドから友人たちに打ち明けることができなかった。
ヒィロさんが通っていた高校には文化祭や体育祭などの学校行事が一切なく、クラブ活動すら存在しなかった。「僕は少女漫画が好きで、矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』の世界を夢見ていたので、愕然としましたね」と話す。しかし、それがきっかけで「学校以外の人とバンドを組もう」と思い立ち、インターネットの掲示板や楽器屋のチラシでメンバーを探し始めた。
「1年半後に僕らは必ずメジャーに行く」徹底的な戦略で夢を実現
高校卒業後はフリーターとなり、20歳で初めてプロ志向のメンバーとインディーズバンドを組んだ。いくつかのバンドを経験した後、事務所に所属するものの、メンバーの脱退によって活動休止に陥ってしまう。事務所の社長からの「リーダーとしてバンドを立て直しなさい」という言葉を受け、「売れるバンドにするために、できることは全部やろう」と決意した。
ヒィロさんは売れるバンドを作るため、曲を全て書き直し、完璧なビジュアル系バンドに必要なメンバーの条件を徹底的に検討した。「5人並んだときのステージ映えを計算して、ボーカルは身長170cmから175cm、ギタリストの2人は155cmから165cm。また、メンバーのキャラが被らないように、ボーカルは万人受けするかっこいい系、ギタリストは元気で明るいタイプと、中性的な可愛い系」と具体的な条件を設定。将来的にメイクを薄くしてメジャーデビューすることを想定し、美形のメンバーを探し求めた。
新メンバーを勧誘する際には「1年半後に僕らは必ずメジャーに行く、できなかったら解散する。だから僕についてきて」と宣言。その言葉通り、1年半後の2011年に「ν[NEU](ニュー)」としてメジャーデビューを果たした。
この頃、ヒィロさんは美容にも目覚めていく。半年間のバンド活動休止中に鏡を見て自分の老け具合に驚愕したのがきっかけだった。それまではメイク落としシートで顔をゴシゴシ擦るだけの簡単なケアしかしていなかったが、「男として憧れられる存在にならなければ」と決意し、スキンケアやサプリメントを研究するようになった。
「ファンの子たちに『みんなの肌は俺が守る』と言って美容好きキャラになっていた」というヒィロさん。当時はまだ男性がスキンケアをするのは珍しく、ライブハウスの楽屋でパックをしていると対バン仲間からイジられることもあった。しかし面白いことに、同世代のバンドマンたちが30代になると「化粧水何使ってるの?」「おすすめのサプリメントを教えてほしい」と頼られるようになったという。
売れてからの苦しみ
メジャーデビューを果たした「ν[NEU]」は大きなプロジェクトとして注目されたが、それは同時に大きな期待と責任を背負うことでもあった。「輝かしい未来しか見えなかった僕らは、そこから苦しみ抜くことになりました」とヒィロさんは当時を振り返っている。
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