名前のない関係、女性同士の恋愛も描き……

 2012年に放送された『最後から二番目の恋』を改めて見返してみても、本作がいかに時代の先端を走っていたかがわかる。むしろ令和7年の今になり、ようやく時代が『最後から二番目の恋』の価値観に追いついたのではないかと思うほどだ。

2012年放送の第1シリーズ『最後から二番目の恋』(FODより)

 大人たちの名前がつかない関係性、血縁のない人同士のつながり、恋愛至上主義ではない考え方。そして、千明に対する万理子の想いを“恋愛”として描き、女性から女性への恋心を物語上で可視化したことは、当時としてはやはり珍しかったのではないか。2022年の『作りたい女と食べたい女』(NHK総合)や2024年『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』(MBS)など、近年になってようやく女性同士の恋愛を描いたドラマが増えてきたからこそ、その重要性が沁みる。

双子のきょうだいを演じた坂口憲二と(フジ系『続・続・最後から二番目の恋』Xより)

 万理子は千明への恋心を自覚していたが、その想いを押し付けようとはしなかった。なぜならば、千明は当時真平と交際しており、別れた後は和平と仲睦まじい関係だったからだ。しかし、万理子は腐らなかった。千明に誘われるがままテレビドラマ業界に飛び込んだ万理子は、「ドラマを作る時プロデューサーと脚本家は恋愛しているのと同じ」という千明の言葉に背中を押され、脚本家になる。

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“極度の人見知り”の脚本家・長倉万里子を演じる内田有紀(フジ系『続・続・最後から二番目の恋』Xより)

日本のテレビドラマ史に刻まれた“史上最高の愛の告白”

 現実で恋愛関係になれないならば、仕事上でつながりたい。その想いをまっすぐ受け止めた千明と、万理子が辿り着いた鮮やかな答えに、心を救われた人もいるはずだ。

『続・続』では、売れっ子脚本家になった万理子が、ついに千明のもとから精神的な巣立ちを迎える。己のクリエイティブ魂に導かれるように書き上げた万理子の物語は、燻っていた千明のプロデューサー魂に火をつけた。

 小泉今日子の声で読み上げられた「今までは仕事上の恋人だったけど、今度は溶け合いたいです。作品で一つになりたい。どうかな?」というセリフは、史上最高の愛の告白として、日本のテレビドラマ史に深く刻まれたことだろう。

フジ系『続・続・最後から二番目の恋』Xより

『続・続』も残すところ、あと2話。早くも“ロス”が怖いけれど、まるで人生のご褒美のような時間だった。生きていればこんなに嬉しいこともあるのだと思わせてくれたこの3か月。

 千明や和平や万理子たちは、数年後どうなっているのだろう。次に会えるのは、1年後か2年後か11年後か、はたまたその先か。生きていさえすれば、私たちはふたたび、奇跡のような瞬間に立ち会えるのかもしれない。

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