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厳密には魚類ですらないヌタウナギ

 次に海底に暮らす『ヌタウナギ』。これに至っては厳密には魚類ですらない「無顎類」という分類群に属す生物であり、まともなヒレはおろか上下に開く顎すら持たない。さらには目も退化しており、大型魚などの外敵に襲われると身の周りの海水をゼリー状の粘液に変えて鰓を詰まらせ、窒息させるという奇怪極まる習性まで持っている。

ヌタウナギ
ヌタウナギが噴き出す粘液。くずきりのような感触。
ヌタウナギの口。あ、こいつやっぱり魚類じゃないな。

  こんなゲテモノ的要素のかたまりみたいな生物であるが、東北の一部地域では干物にして食用とされる。さらに韓国ではいたってポピュラーな食材としてコチュジャン炒めなどで賞味されている。見た目に反して非常に美味であるが、食感と味は魚よりもむしろイカやタコに近い。やはり蒲焼にマッチするものでは決してない。タウナギにせよヌタウナギにせよ、おとなしく現地流の調理法で食べるのが一番である。

ヌタウナギのコチュジャン炒め。蒲焼に合う魚(?)ではない。

デンキウナギが豚の角煮にそっくりな理由

 ……そうそう。○○ウナギといえばあの世界最強のウナギを忘れてはならない。

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 私はアマゾン奥地へ出向いた際に『デンキウナギ』の蒲焼を作ってみたことがある。驚くべきことに、その味は豚の角煮の脂身にそっくりであった。彼らは遊泳に用いる筋肉をほとんど持たず、身体はそのほとんどがプリプリとしたゼリー状の発電器官で占められている。これを加熱するとトロトロにやわらかくなり、そこに甘辛いタレが絡むとまさに角煮。ただし脂身オンリー。非常に興味深い結果ではあるものの、やはりたくさん食べたくなるようなモノではなかった。

デンキウナギ。写真では素手で触っているが、当然感電する。危険なので真似しないように。
デンキウナギを筒切りにした断面。大半が白っぽいゼリー状の組織で満たされている。これが発電器官!
デンキウナギの蒲焼き。角煮の脂身そっくり……。