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ウナギ以外の魚も蒲焼に

 では思い切って名実ともにウナギと無縁な魚ではどうだろう。

 ウナギの代用魚候補といえば、近畿大学による『ウナギ味のナマズ』開発には日本中から大きな関心が寄せられている。あのプロジェクトで扱われる『マナマズ』は、都市河川や用水路でよく見かける魚である。いかにも泥臭そうな印象を受けるが、清浄な水に棲んでいるものはクセもなく蒲焼にしてもウマい。

マナマズ。沖縄を除く日本各地に分布する日本産ナマズの代表格。
こちらはマナマズの蒲焼き。さっぱりと上品で美味。

 ただしウナギのそれとは異なるベクトルのウマさ。濃厚なウナギに対して、ナマズはよりさっぱりと上品な印象だ。だが近畿大学のプロジェクトではナマズ肉にさらに脂を乗せることで味をウナギに近づけていくということだから、完成形を試食できる日が待ち遠しい限りである。

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 また、単純に食味に関していえば熱帯産の『ウォーキングキャットフィッシュ』というナマズの方がよりウナギに近い。この魚は東南アジアでは盛んに養殖されており、一般的な食材として地位を確立している。

バンコクのスーパーマーケットに並ぶウォーキングキャットフィッシュ。

 現地の屋台では串焼が定番商品で、ビールのアテやおやつとして歩きながらかじる。これが甘辛いタレで焼き上げられており、香りも味もなんとなくウナギの蒲焼に似ているのだ。もし近大の養殖・蓄養技術がこのナマズにも応用できるようなら……。と思いを馳せずにはいられない。

ウォーキングキャットフィッシュの串焼。身が黄色っぽいのが特徴。
もちろん純日本風の蒲焼にも合う。

別にいいじゃない、おいしいんだから

 また姿こそウナギとかけ離れるが、『サンマ』や『イワシ』も脂肪分に富んでいて蒲焼によく合う。近頃はスーパーでもウナギの蒲焼と同じ並びに陳列されるのを見かけるようになった。さらには豚肉の蒲焼なんかも土用の丑の日の定番惣菜になりつつある。

 もちろんどれも「ウナギそっくり!」とはいかないのだけど、別にいいじゃない。おいしいんだから。むしろそういうアナザー蒲焼たちを積極的に受け入れて、ウナギを少し我慢してみてはどうだろう。でないと、ウナギが本当に絶滅するか天然記念物に指定されるかして二度と食べる機会がなくなってしまうかもしれないよ。

 またいつか胸を張って大手を振ってウナギを食べられる土用の丑の日を迎えたい。そのためにも、その他の蒲焼を試してまわるのも面白いと思うのだが。

写真=平坂寛