「ツムギはA子が幼稚園に来ると知った時から不安状態に陥ってしまいました。幼稚園側にも経緯を伝えて『ケアしてください』と再三お願いしていたんですが、ほとんど効果がありませんでした……」
A子は登園初日からツムギちゃんを追いかけまわし、職員が引き剥がそうとしてもツムギちゃんにつきまとったという。幼稚園の職員に欠員が出て人手不足だった事情もあり、対応は後手に回ってしまった。
「頻繁に夜泣きするようになり、おねしょも始まってしまいました」
「A子が来た初日からツムギの様子が一気に不安定になりました。頻繁に夜泣きするようになり、おねしょも始まってしまいました。夜になると『ああ! ああ!』と叫び声をあげて2、3時間ごとに起きてしまいます。私の仕事に配慮してくれて、妻が娘と一緒に寝ていたのですが、娘の不安、異常に直面する妻の負荷は肉体的にも精神的にも大きく、妻も『なんでこんなことになっちゃったんだろう』『自分が悪かったのかな』とどんどん塞ぎ込んでいきました」
このままでは家庭が崩壊してしまう、と危機感を覚え、宇佐美さんは幼稚園に働きかけてA子の保護者との面談にこぎつけた。事情を説明するとその場ではA子の保護者が「状況によってはこちらが転園することも検討します」と柔軟な姿勢を見せたので宇佐美さんは一縷の希望を持ったが、その希望は叶わなかった。
それ以降もツムギちゃんは、A子から人形遊び用の小物を投げつけられる、苦労して作った工作を取り上げられそうになる、などのトラブルが続いた。ある時はツムギちゃんがA子に対して「何でこんなことをするのか」とこれまでの仕打ちを泣いて抗議することもあったが、この時A子はおどけてまともに話を聞かなかった。
そして年が明けた2025年の1月、A子の保護者との2回目の面談では、向こうの態度が大きく変わった。
「1回目の面談では、謝罪こそしないものの『こちらが転園することも検討する』という姿勢でしたが、2回目は『いじめがあるというのなら証拠を出してみろ』と一転して強硬姿勢になりました。同席していた園長が『園での様子を見る限り“何もなかった”ということはないと思う」と助け船を出してくれましたが、A子の父親は『そうですか』と言うだけで、聞く耳を持ちませんでした。それを見て、断腸の思いで幼稚園の登園を停止することを決めました。せっかくいじめを逃れるために転園したのに、また、いじめで通えなくなるのか、とやりきれない気持ちでした」
しかし幼稚園に通わなくなったことで、ツムギちゃんの症状は改善するどころかさらに悪化した。
「耳が聞こえない、モノが二重に見える、といった身体症状を訴えるようになりました。それに外に出るとA子と会うのが怖くて足がすくんで動けなくなってしまうので、外にも出られなくなりました。なんら状況改善の希望が持てないので、一度娘は東京を離れた方がいいと判断し、妻の実家に1週間ほど預かってもらうことにしました。1週間たつと娘は『東京に帰りたくない』と言い戻ってこられませんでした。東京にいることが怖くて辛かったんだと思います。それでも1ヶ月後、娘は勇気を出して東京に帰ってきてくれました。娘は娘なりに前に進もうとしていたんだと思います」
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