経済産業省出身で制度アナリスト・評論家の宇佐美典也さん(44)の次女、ツムギちゃん(仮名、5歳)が通っていた港区の保育園、幼稚園で同級生の女児A子からいじめを受け、精神的に不安定になった。症状は、難聴、モノが二重に見える、といった身体症状にまで悪化し、日々の登園どころか家から出ることすら難しい状況に追い込まれた。
一度はいじめから逃れるために元々通っていた保育園から別の幼稚園に転園したものの、A子が「ツムギちゃんと遊びたい」と同じ保育園へ転園してきたことで被害が再発していた。この件は港区史上初の「いじめ重大事態」枠組みに沿った調査が行われ、9月30日には調査報告書も発表されている。
一体何があったのか、宇佐美さんに話を聞いた。
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ツムギちゃんの症状が重くなるにつれ、その影響が家庭全体に重くのしかかってくることになった。
「私はどうしても仕事で家を離れなければいけないことが多いので、妻にツムギを見てもらっていた結果、妻の負担が限界を超えてきました。この頃妻は1日に2~3回嘔吐するのが日常で、鬱病の診断が下りました。家全体に緊迫感が張り詰めていました。そんな中で小学校低学年のツムギの姉が『私が家を支える』と妻を励ましたり、ツムギの話を聞いてくれたり、本当に助けられました」
「『助けてくれ』という気持ちで港区の子ども家庭支援センターに連絡したのですが…」
日に日に状況が悪化する中で、今年の3月頃から宇佐美さんは港区や行政機関に助けを求めたが、その反応は鈍いものだった。
「離れた場所への引っ越し、転園も考えました。でもツムギの姉が小学校に馴染んで友達もいるのでやっぱり引っ越したくはない、かといって、A子の保護者の対応は全く期待できない。『助けてくれ』という気持ちで港区が運営している子ども家庭支援センターに連絡したのですが、彼らは話を聞くだけで本当に何もしてくれませんでした。何のための組織なんですかね」
業を煮やした宇佐美さんは港区教育委員会に「いじめ重大事態」の申し立てをするしかないと考えた。しかし、そこには思わぬ落とし穴があった。

