「多くの自治体が用意している『いじめ重大事態』の申し立ての案内ページが、港区にはなかったんです。そこで知り合いの区議を通じて調べてもらったら、区の教育委員会の回答は『保護者からの申し立ては想定しておらず、実績もない。』というものでした。
しかし港区は過去に『被害児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申し立てがあったときは、重大事態が発生したものとして報告・調査にあたります』と文書で明記しています。区議がその矛盾を指摘して、区議会で質問してくれたおかげで、4月末にようやく申し立てが受理されました」
「私も妻も娘も、みんなボロボロです」
4月になり、ツムギちゃんは幼稚園では年長の年次となった。どうにか東京の家に戻ることができ家族4人での生活が始まったが、ツムギちゃんの精神状況は不安定なままだった。
「東京に戻ってから『ロボットの世界』の話をさらに頻繁にするようになり、架空の友達の話に加えて、“ロボットの世界のパパ、ママ”も出てきて空想と現実の境目がかなり怪しくなっていました。また、一度幼稚園に荷物を取りに行くことがあったのですが、その際ツムギが『一緒に行きたい』というので心配しながらも一緒に連れて行ったところ、幼稚園の靴箱でA子の名前を見てしまいました。
その日からツムギは極端に幼児返りの症状が出て、授乳をせがんだり、おんぶやベビーカーでの移動をねだったりするようになりました。また、極端な自信喪失状態で何かあると急に『ごめんなさい、ごめんなさい』と謝り続けることもありました。加えて不眠症状も顕著に出てきました。この頃は私も精神的にキツさのピークで全てを投げ出したくなることもありましたが、毎晩、松田聖子さんの『瑠璃色の地球』を聴いて『夜明けのこない夜はないさ』という歌詞に励まされていました」
同じころ、ツムギちゃんは精神科でPTSDの疑いという診断も受けている。
「睡眠導入剤が処方されて眠れるようになったのですが、小学生にもなっていない娘に睡眠導入剤を飲ませることで、妻の精神状態もさらに悪化しました。私も妻も娘も、みんなボロボロです」


