その間も宇佐美さんは幼稚園・教育委員会との交渉を重ね、7月頃からはクラス分けをしてA子と接触しない状況でツムギちゃんが週に1度の登園を再開できることになった。友達に会えて「自分は悪い子じゃないんだ」と思えたことでツムギちゃんの精神状態は少しずつ改善方向に向かっていった。

「幼稚園に通うことがツムギにとっても大事だと再確認し、園を通じてA子の家庭に『お互いに2日ずつ休むことで接触せずに週3回登園できるようにできないか』という提案をしたのですが拒否されました。これを受け、幼稚園も代替案を検討してくれたのですが、とても他の保護者に受け入れられるようなものではありませんでした。ここで万事窮すとなり、今の制度そのものがいじめ加害者に有利で公的な救済だけでは現状は打開できないと判断し、覚悟を決めて別の方法を取ることにしました」

 そして9月14日、宇佐美さんは自らのXに事件についての顛末をポストした。このポストは1400万回以上見られ、10万をこえる「いいね」が集まった。

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宇佐美さんが投稿したポスト

 それを受けてか9月下旬にはA子が退園することになった。

「港区に住むほとんどの親は、子どもがいじめられてもそれを解決する方法がほとんどないということ」

「公的な制度の外にあるSNSの力を借りて圧力をかけた形になるので自分としても複雑な思いはありますが、再登園を実現するために他の方法はありませんでした。ここまで来られたのは、区議に知り合いがいて、SNSである程度発信力がある自分だったから、という部分が大きいことは自覚しています。

 逆に、港区に住むほとんどの親は、子どもがいじめられてもそれを解決する方法がほとんどないということです。実際に、港区で『いじめ重大事態』の枠組みの調査が行われたのは小学校や中学校などを含めてもうちのケースが初めてです。その裏には、泣き寝入りしてきた家庭がたくさんいるはずです。港区は認定されたいじめの数も他自治体に比べて異様に少なく、いじめ対策が極めて甘かったと言わざるをえません」

 幼稚園への登園再開から1カ月ほどが経ち、ツムギちゃんの状態は急速に回復しているという。

「ロボットの世界の話はめっきりしなくなり、一度聞いたら『ロボットはみんな治った』と言っていました。一時期は『私が死んでおじいちゃんが生き返ればいいのに』など自分の命を軽く扱うこともあったのですが、それもなくなりました」

 4月に申し立て、5月に認定されていた「いじめ重大事態」に準じた調査報告書は9月30日に発表されたが、ツムギちゃんに対するA子の行為がいじめに当たるかどうかは曖昧にされた。

 それでも保育園の対応についても「園長が配慮していれば、本事案は少なくとも阻止できた可能性があると考えられる」と指摘。港区や教育委員会に対してもいじめの情報を吸い上げる報告ルールの作成や、いじめかどうかを認定するフローを確立する必要性があると指摘している。

 

 宇佐美さんは今後について、港区に対して安全配慮義務違反での損害賠償を要求する訴訟を起こすことを検討している。

「港区がいじめ対策をしてこなかったことで泣き寝入りしている家庭が絶対にあると思うんです。いじめを早く見つけることは、被害者にとってはもちろん、加害者側にとっても、早い段階で矯正を始められるのでメリットがあるはず。幼稚園の先生や教育委員会など、現場の方々は彼らの職責の中で真摯に対応してくれたと思っていますが、港区の制度自体に大きな不備があるのは明らか。同じ苦しみを味わう家庭を減らすためにも、法廷で議論したいです」

 港区に事実確認を求めると、港区では令和元年度以降で小学校で677件、中学校で64件のいじめの発生しているが、いじめ重大事態の申し立ては0件、重大事態調査も0件との回答だった。

 幼稚園・保育園については文部科学省が示す「いじめ」の定義の対象ではなく、件数は計上されていないという。

 子どもや保護者が安心して通える学習環境の整備が待たれる。

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