3年間で合計6000万円の献金
年が明け、徹也の妹が生まれた。伯父は1985年4月から、父がいなくなった山上家に対し毎月5万円、生活費を支援したという。だが、山上家の生活は苦しかった。徹也の母は、夫の死の数年後に統一教会への献金を始めていたからだ。
1991年に入会すると多額の献金を始めた。伯父が言う。
「入会とほぼ同時に2000万円、その後すぐに3000万円。さらに3年後くらいに現金で1000万円。合計で6000万円。これらの原資は弟(徹也の父)の保険金、命の代償ですよね」
徹也の母と同じ奈良教会に所属していた60代男性はこう話す。
「当時奈良県には250人ほどの信者がいましたが、彼女の献金額はトップクラスでした。1000万円くらい献金すると女性信者が褒めそやすんです。『あの方は素晴らしい』『あの方は3000万円よ』。それで自分も頑張ろうとなるわけです」
各地域の教会には献金を集める専属の人がいたと男性が続ける。
「『親衛隊』と言って女性が担当していました。献金は表向き強制ではなく本人の意思。でも、どれくらいの資産をもっているかは全部書き出させる。家族は何人、家は持ち家か、銀行預金はいくらか。その上で弱みにつけ込む。彼女の場合、それは長男のAちゃんでした」
妹が生まれてまだ1歳にもならない頃、山上の兄に小児がんが見つかった。開頭手術をした後、抗がん剤治療をした。その副作用で右目を失明する。1986年のことだ。
伯父によれば、建設会社を営む家族の精神的支柱だった実母の死も追い打ちをかけたという。
徹也の母は、先祖の霊を慰めるという「先祖解怨式」にも繰り返し参加。参加料は1回70万円。4回ほど通っていた形跡がある。また、韓国・清平の本部に長男を連れて訪れ、教義や祈祷を受ける40日間修練にも参加した。
呆れた伯父は生活費の打ち切りを通告。生活は一層厳しくなった。
〈この続きでは、山上徹也被告が事件を起こすまでの経緯を伝えています〉
※本記事の全文(約1万8000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(森健、本誌取材班「安倍元首相暗殺と統一教会 深層レポート」)。この他にも「文藝春秋PLUS」は旧統一教会問題に関する記事を多数掲載しています。
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