一方、「レベル」は「過去どのくらいのダメージが蓄積したか」「どのくらい病気が進行しているか」を示す項目です。腎機能のクレアチニンや眼底検査、尿蛋白、心雑音、心電図などが該当します。こちらは、「スピード」とは異なり、ひとたび悪くなってしまうと、なかなか元通りにできない、改善できないケースが多いことが特徴でした。薬や手術が必要になり、「これ以上は悪化させない」ということに主眼を置いて、治療していくことが重要になってきます。
C判定で「すでに病気」の状態も
例えば、コレステロールや血圧など「スピード」の項目でC判定が出た場合は「要経過観察」ということになりますが、その本当の意味は「今から生活習慣を意識すれば改善することはできる。ただ、場合によっては精密検査や医療介入が必要になる」ということになります。
健康診断は「日本人間ドック・予防医療学会」が設定した判定区分を採用しており、血圧、コレステロール、血糖値のC判定、D判定の数値は、それぞれ下の図表㉑のようになります。
健康診断の基準はやや緩め(高め)に設定されているので、「C判定なのにかなり数値が高いな」と驚く方もいるでしょう。その驚きは間違っていません。ガイドラインの基準に照らしてみれば、LDLコレステロールが140(mg/dL)の場合は「脂質異常症」と診断されるからです。
血圧についても、病院の診察時の収縮期血圧が140(mmHg)であれば「高血圧」と診断されます。つまり健康診断ではC判定であっても、すでに病気になっている状態なのです。
そのため、健康診断の「スピード」の項目でC判定が出た場合は、絶対に病院に行くべきです。健康診断では「ただちに医療的介入が必要ではない」という理由でC判定になっているのであって、なにも「病気になっていない」とまでは言っていないのです。
もちろん、「スピード」の項目は生活習慣によって改善しやすいので、病院に行っても必ずしも投薬治療をするわけではありませんし、採血をして医師と一緒に経過観察をすることも多々あります。しかし、だからと言って、C判定を自己判断で放置してよいということにはならないのです。
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この続きは『健康診断でここまでわかる』(文春新書)に収録されています。

