スターリンの死を巡るブラック・コメディ
そんなロシアで上映禁止になった映画、『スターリンの葬送狂騒曲』はまさにファシズムを皮肉る内容です。1953年、ソビエト連邦の最高権力者スターリンが脳出血を発症。スターリンといえば“粛清”の文字が真っ先に浮かぶほど、大量虐殺による恐怖政治で国民を支配してきた独裁者です。
本作はスターリンの死を巡り、実在の政治家たちが後継者争いを繰り広げるブラック・コメディ。その死を悼むふりをしながら、スターリンの側近だったマレンコフや第一書記のフルシチョフ、秘密警察警備隊長のベリヤが3大勢力となって足の引っ張り合いを繰り広げ、スターリンの娘に取り入ろうとしたり、粛清を急遽取りやめて融和路線に向かったりします。大の男たちのなりふり構わぬ態度や、映画の演出も登場人物の後ろで今なお粛清が進行中だったりして、かなり黒い笑いに満ちています。これが現ロシア政府によって上映禁止になったのもむべなるかな。元スパイの暗殺未遂騒ぎも記憶に新しいプーチン政権だけでなく、ここに描かれていることはまさに今、3選を巡ってどこかの国で起こっていることも髣髴とさせます。
モロトフ役をモンティ・パイソンのメンバーが好演
本作はイギリス、フランス、カナダ、ベルギーの合作で、俳優陣はアメリカ人やイギリス人が中心。言語も割り切って英語です。フルシチョフを演じるスティーヴ・ブシェミの怪演も見どころのほか、モロトフ役をモンティ・パイソンのメンバーであるマイケル・ペイリンが演じているのも嬉しいところ。本作自体がまさにパイソンズのスケッチや映画そのままの感があります。モンティ・パイソンファンの方には、ぜひオススメの作品です。