前任者が引き継ぎノートを用意するくらい、透は取り扱いが難しい客なのだが、とあることがきっけかで秋生は彼に受け入れてもらえるようになる。家政夫として透の世話をするうちに、鹿住の家が代々「祓い屋」をしていることを知った秋生は、透の幽霊祓いに同行することに。いつも同じ時刻に駅のホームに現れては、自身の死をなぞるかのように飛び込みを繰り返すという幽霊を透がどのように祓うのか。それを知ったとき、なぜ霞書房が舞台なのか分かると思う。これが1話目の「二十一時三十八分の幽霊」。
2話目「二〇一号室の女」はホラーテイストが強くて個人的には大好きな話だった。「視点が変わるとものの見え方が変わる」というのを頭ではわかっていても、ハッとさせられてしまう。生きている者と幽霊、本当に怖いのはどっちなのかと考えさせられる話だった。
大号泣間違いなしの仕掛けが!
ここまでの私の紹介を読んで、「面白そうだけど、なんか地味かも」と思いました? そうでしょうね。ネタバレを踏まないように書くとそう感じますよね。でも、違うんですよ! この作品、うまーく読者を誘導しながら面白く書かれているんですよ。「へえ、いいじゃん」みたいな感じで余裕ぶって読んでいる読者が、あとで大号泣するように考えられているんですよ! いいんです。普通な気持ちで読んでいいんです。「なんでこうなの?」とか「都合が良すぎる設定じゃない?」とか思っていればいいんですよ! 私がそうでした! 澤村御影の手の内に踊らされていました!
3話目「ごっこ遊びの家」を読んでください。私の紹介がぼんやりとしていたのも分かると思います。私もこれから読む方には、まっさらな気持ちで読んでいただきたいのです。だんだん読みながら涙が止まらなくなって、洗濯物の乾いていないタオルで涙を拭けばいいんです。嬉しい、騙された。嬉しい、そして切ない切ない。とても悲しいと感じていただけたなら同士……と、心でガッツポーズをしてしまいます。
どうすればそんな体験が出来るかって? まずはこの小説のページをめくるのです。澤村さんが初めて角川文庫以外のレーベルから出す本作。早く続きが読みたい! そして色々なひとに勧めたくなる作品です。
