遠藤補佐官の意義

 田﨑 もう一つ注目なのが、維新の遠藤敬国対委員長を首相補佐官に据えたことです。連立相手とはいえ、これまで他党の現職議員を官邸内に常駐する補佐官に起用したことはありません。公明党でさえ官邸内には入れなかった。

田﨑氏 Ⓒ文藝春秋

 遠藤さんとの距離が縮まったのは高市さんが衆議院の議院運営委員長に就任した2018年10月です。就任直後、高市さんは根回しをせずに、独自の国会改革案を野党に提案して猛反発を食らいました。本会議の開会が45分遅れるなど混乱を招き、与党の理事からも見放された。そこで高市さんが「委員長室に来てくれませんか?」と頼ったのが維新の理事だった遠藤さんでした。今回も、総裁選直後に遠藤さんが「頑張ってください」とメールを送ったら、高市さんから折り返しの電話があった。これが連立につながりました。

 遠藤さんは立憲や国民民主とのパイプだけでなく、霞が関の官僚、とりわけ財務省からの信頼が厚い。ある財務省幹部は「今年の予算案は遠藤さんがいなければ年度内に成立しなかった」と感謝しきりでした。国対委員長としての手腕は抜群で、維新の党内を固めながら、自民と野党の間で調整に奔走していました。

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 中北 ただイレギュラーな人事ですから、両党そっちのけで高市さんと遠藤さんだけで政策や国会対策が決まるリスクが懸念されます。第一次安倍政権では、政治家の補佐官を重用して混乱が生じました。広報担当の世耕弘成補佐官と塩崎恭久官房長官、経済財政担当の根本匠補佐官と大田弘子経済財政相などの間に権限争いが起きた。一歩間違えると、第一次安倍政権の二の舞です。

中北氏 Ⓒ文藝春秋

 田﨑 いまのところは木原官房長官と役割分担しながらうまくやっているようです。お互いに相談して高市さんに厳しい意見を述べ、その内容も合致している、と。官邸の体制は石破政権よりも、官僚も含め格段に強化されています。

※本記事の全文(約9000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(中北浩爾×田﨑史郎「サナエ式人材登用法と気になる石破似の性格」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・片山財務相から酷い目に……
・萩生田幹事長代行のピンチ
・維新が閣僚を出せないワケ
・積極財政派とみられたが

出典元

文藝春秋

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