日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
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まさかの復活劇
外交・安全保障政策の司令塔たる「国家安全保障局」(NSS)トップだった岡野正敬前局長(昭和62年、外務省)の突然の退任も驚きをもって受け止められた。新局長に就いたのは、2週間ほど前にインドネシア大使の発令を受けたばかりの市川恵一氏(平成元年、同)。今年1月にNSS局長に就いた岡野氏を1年足らずで交代させ、本省の船越健裕外務事務次官(昭和63年、同)より年次が一つ下の市川氏をわざわざ強引に引っ張ってきた理由は、当然ながら一筋縄でいくものではない。
そもそも岡野氏がNSS局長に起用されたのは、初代局長を5年あまり務めた「外交安保のゴッドファーザー」谷内正太郎氏(44年、同)から1人挟み、NSS局長を務めた秋葉剛男氏(57年、同)による周到な布石によるところが大きい。
戦後最長の外務次官在任記録を打ち立てた秋葉氏は、2023年夏の幹部人事に当たり、自らの後任次官だった森健良氏(58年、同)を駐米大使に推さず、代わりに有力次官候補だった山田重夫氏(61年、同)を送り出し、官房副長官補でダークホース的存在の岡野氏を次官に抜擢する筋書きを描いた。派手な実績を挙げることを好む山田氏に対米外交の切り盛りをさせ、掴みどころがないようでいて、仕事ぶりは手堅い岡野氏にこそ、次官を経て「裏仕事」を取り仕切るNSS局長とするレールを敷いた。
一方の市川氏は民主党政権時の枝野幸男官房長官秘書官として官邸中枢に入ると、政権交代後も引き続き菅義偉官房長官に仕え、「菅印」官僚として総合外交政策局総務課長、駐米公使、北米局長と順調に「安保屋」の花形キャリアを歴任。「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想策定を主導したことで、安倍官邸の大立者だった今井尚哉氏らの信任も得た。
常にポケットチーフを欠かさず、ほのかなコロンの香りを漂わせる典型的エリート外務官僚スタイルの市川氏は、FOIP構想を「僕が作った」と公言するような尊大さが拭えない。外務官僚の宿痾とも言える「相手を見て対応を変える」側面も強く、永田町・霞が関で反感を抱く向きも少なくない。
〈この続きでは、市川氏と林芳正総務相との対立や、岡野氏退任の隠れた理由について触れられています〉
※本記事の全文(約4500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年12月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
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